こたつむり

丑三つの村のこたつむりのレビュー・感想・評価

丑三つの村(1983年製作の映画)
3.6
★ 皆様方、今に見ておれ、でございますよ

誰にでも心に残る事件があると思います。
僕にとっては連合赤軍が引き起こした「山岳ベース事件」。そして、本作のモチーフとなった「津山三十人殺し」。だから、本作を鑑賞するのは必然でした。

ただ、正直なところ。
安易な気持ちでオススメできない作品です。
何しろ、細部は違いますが、事件の骨格を見事に再現していますからね。特に事件の下敷きとなっている“夜這い文化”に触れたのは感嘆の溜息が止まりません。

ゆえに“救い”が無いのです。
五月みどりさんや池波志乃さんのエロ描写も当然のことながら、ヒロイン役である田中美佐子さんの身体を張った演技すらも“凄惨な結末”への伏線でしかないのですから。

また、寒村という閉鎖空間での“孤立する辛さ”を描いているので…古尾谷雅人さん演じる主人公に心を添えてしまうのです。もうね。危険極まりない作品ですよ。

だから、良識派は言うのでしょう。
「こんな作品を世に流通させたら真似する輩がいるかもしれない」と。

でもね。
大量殺人者を擁護するわけではありませんが“真似する状況”に追いつめたことが問題。本作に対して眉をひそめる前に「自分の感情で他人を追いつめることは避けるべき」と襟を正すことが大切なのです。

まあ、そんなわけで。
当時「全編が非道で残虐的」と判断され、未成年お断りとなった作品。気軽な気持ちで臨むのはオススメしませんが「津山三十人殺し」を捉えるには絶好の題材だと思います(田中美佐子さんの裸を観たい…なんて疚しい気持ちは否定しませんけどね…当時24歳…ゲフンゲフン)。

ただ、監督さんが「生々しさを消したい」と考えた結果かもしれませんが、昔のアドベンチャーゲームを彷彿させる電子音楽は微妙でした。確かに仰々しい旋律だと“B級ホラー”に陥る可能性もありますが…うーん。笹路正徳さんの無駄使いって言ったら暴言でしょうかね。
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