グラビティボルト

スキャナーズのグラビティボルトのレビュー・感想・評価

スキャナーズ(1981年製作の映画)
3.9
黒沢清に「活劇が撮れる」と言わしめたクローネンバーグ、実はあまり観れてない。これは観た気になってた映画。

超能力者の映画で、説明を諸々省き、睨み顔の応酬で負けた方の頭部が爆発、発火したりする描写で処理するのが徹底している。
超能力者を追い詰めるのが、同種の能力者だけでなく銃火器を持つ刺客な為、シンプルな活劇になるのも凄い。

超能力者同士で脳波のリンクを合わせてた所に刺客が襲撃して、黄色野バンで逃走するシーンが見もの。
濡れた地面にネオンが冴える夜で、
車両が全身映るフルショットにすると画面端に追手の車が歩道を走って追い付いてきている様をさり気なく映す。
この後、隣にピッタリマークされてからの怒涛の銃撃とカークラッシュも凄い。
窓が開いたかと思いきや、凶悪な銃火器が次々と顔を出し、超能力者達の身体に真っ赤な穴を空けていく。

あと、大企業の秘密ファイルをハッキングする件があるんだけど、多くの映画が苦労する「ハッキングシーンの地味さ」にクローネンバーグは電線の炎上、超能力に耐えきれず電話機が溶ける衝撃、事態が発展しまくってガソスタ大爆発まで盛り上げてしまう。この理屈無しの大活劇ね。
精神分析的なお話に一切興味を示さず、とにかく具体的な死や出来事だけで進行していく構造とストイックな撮影が見事。