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長屋紳士録のlarabeeのレビュー・感想・評価

長屋紳士録(1947年製作の映画)
3.8
【おばちゃんの「メッ!」が怖すぎてトラウマになります】

終戦から2年が経って日本全体が貧しい最中の作品。当然私も当時の世相は知らないのだが、親とはぐれた子供をそのまま自分のウチの子供にしてしまおう、なんて事が罷り通る時代もあったんですね。

「戦災孤児」なんていう言葉もあるくらいなので、この時代は何でもアリだったんだろう。

同じ長屋に住む若者(笠智衆が若者役!)に勝手についてきた迷子の男の子、長屋の住人は何やかんや理由をつけ、結局未亡人のおたねが世話する羽目になる。

おたねも小汚い子供を預かりたくなく、嫌々預かる。その子もあんまり愛想は良くないし、寝小便したりしておたねに怒られてばっかり。

はぐれたと言う父親を二人で探しに行くが見つからず、おたねは海岸に置き去りにしようとするが子供も必死でついてくる。そりゃ生き死にに関わるから。

そんなこんなで嫌がるおたねだが、予想通り情が湧いてくる。もう本当に自分の子供にしようか、と思ってたところにまたヤマ場が。はてさてどうなる?

想像出来るストーリーではあるのだが、当時の世相と、怖いおたねと無口な男の子と、無責任だけど良き仲間である長屋の連中が上手くマッチして刺さる作品に仕上がっている。

この辺は流石小津安二郎。小津作品の中で目立つ方ではないけれどキラリと光る名作。
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