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火口のふたりのlarabeeのレビュー・感想・評価

火口のふたり(2019年製作の映画)
4.5
【家族での鑑賞厳禁】

前情報から予想はしていたのですが、ここまでとは。これは家族で観たらアカンやつ。友だちと観る作品でもない。一人で、あるいはよほど関係が出来ているパートナーとしか観ちゃダメ。今どきボカシのある一般映画なんて無いやろ笑。

もと交際相手の直子が結婚すると言うので結婚式に出るため地元秋田に帰る賢治。ふたりが東京で付き合っている時はそりゃとんでもなく体を重ねまくったふたり。

少しのズレから別れてしまったふたりだが、賢治が戻った時、直子の結婚相手は出張中で、昔の体の関係に戻るのに時間はかからなかった。

タガが外れたふたりは一体どうなる?

原作の小説は未見だが、ふたりの過去の見せ方と順番が実に上手い。謎解きとかサスペンスではないので過去の事実だけでも成り立っている作品ではないが、「あぁ、だからそうなのか」の連発で、小出しに小出しに事実が明らかになる、上手いなぁ。そんなふたりの関係にグイグイ引き込まれていく。

好きとか一緒にいて楽しいとか、精神的な結びつきも大事なのだが、「肌が合う」という事実は変えようも無く、生物学的にはそれに従った方がいい。

ふたりが別れてしまったのは生物学的な成り行きではなかった。でも結局生物学的な関係に戻ってしまう。だから一緒になっても明るい未来があるかどうかはわからない。ただただ、今が気持ちよければいい。

富士山の噴火という終末的な状態が暗示している様に、ふたりはどこまでも刹那的。

『悪人』の妻夫木聡と深津絵里も破滅に向かう刹那感が、言いようもない人間の弱さを見せられて心動かされた。『悪人』の方は犯罪が絡むから堕ちていくのだけれど、本作はただただ「肌が合う」だけで離れられないふたり。

『MOTHER マザー』の長澤まさみ、『悪人』の深津絵里も体当たりで濡場(死後?)を演じているが、瀧内公美は体当たりどころか複雑骨折の重体で救急搬送もの。

柄本佑と本当に「ふたり」しか出演していないのに全く飽きさせない。監督の撮りたいモノと役者の力量がカッチリ噛み合って完成度の高い作品に仕上がっている。
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