このレビューはネタバレを含みます
『悪名』の朝吉、『兵隊やくざ』の大宮貴三郎と並んで勝新太郎の当たり役だった座頭市。
本作はシリーズ20作目ということで、キャスティングにも気合を入れた。
用心棒役として三船敏郎を登場させたのです。
斬った張ったの生活に疲れた市(勝新太郎)は、癒しを求めて3年ぶりにある宿場町を訪れた。
しかし訪れた街はやくざが幅を利かせており、昔とは変わって殺気漂う街になっていた。
そのヤクザである小仏一家は用心棒(三船敏郎)を囲っていた。
市がやって来たことを恐れた親分の政五郎は、用心棒に市を斬るように命じるのだが・・・
シリーズ一番の興行収入を上げたということなんですが、作品の出来は残念ながら平凡。
これほど両雄並び立たずという言葉が似合う作品はないですね。
制作の勝プロは目いっぱい見どころを作って観客を楽しませようとしているのはわかりますが、詰め込み過ぎちゃいました。
ヤクザ同士の対立、隠された金の行方、市と用心棒と梅乃(若尾文子)の三角関係、親子の対立、と詰め込み過ぎて焦点が合わなくなっちゃった。
そのためワンシーン、ワンシーンの密度が薄くなって、勝新・三船が持っているはずの殺気が薄れた。
そして、個人的意見として言わせてもらいますと、用心棒に恋なんかさせてはいけない!と思うのです。
その設定のせいで、強いテキーラが薄いウーロン茶になってしまったくらい刺激がなくなった。
その他大勢のチンピラも弱すぎ。
たとえ端役でも殺陣位はしっかりしたものを観たいです。
砂埃と一緒に雪と金が舞い上がる中でのクライマックスなど映像センスはとてもいいのに残念です。
一番得したのは、
江戸からやって来た拳銃使いの殺し屋を演じた岸田森だったんじゃないかな。
岡本喜八監督 115分 1970年1月公開