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すかんぴんウォークのblacknessfallのレビュー・感想・評価

すかんぴんウォーク(1984年製作の映画)
3.8
吉川晃司のデビュー映画、映画デビューではなく映画でデビューしてるらしい。時代を考えるとかなり異例なことに感じる。昭和とは言え80年代前期だから、このパターンあんまないんじゃないかな?吉川晃司、期待かけられてたんだな。

演劇界での成功を夢見て広島から上京した18才の裕司(吉川晃司)はバイト先の喫茶店でポップシンガーを目指す20才の吉夫と出会い夢追い人同士意気投合して同居する。
吉夫との友情を育む中、ある事件をきっかけに2人でバンドに加入することになる。歌手志望の吉夫ではなく裕司が客の注目を集めていく。

フォーマットはよくある青春スター映画でこの後、裕司はスターダムへかけ昇るわけなんだけど、意外とそこまでの過程が苦く物悲しい。
金欲しさから吉夫とやった他愛ない悪事が発覚してスキャンダルになり炎上し活動停止を余儀なくされる。アイドルからポルノスターに転身した亜美との悲恋、これも捲れてスキャンダルに。本来、吉川晃司をスターにする輝かせ映画には必要のない重くリアルで暗い脚本が今でもこの映画を鑑賞に価するものしてると思う。

最初に裕司と吉夫がバイトする喫茶店のマスターは元テニス選手、ウェートレスは元バレリーナ。後にスキャンダルなるバイト2に人にさせるおっさん(原田芳雄)は元ボクサー。3人とも夢破れた人達で夢追い人の裕司と吉夫と対比させることで映画のテーマを暗示してる。
でも、喫茶店マスターの蟹江敬三が蟹🦀しか食べないってギャグはいらなかった気がする。理由も明かされるけど取ってつけた感半端ない上につまらねぇし笑

他にも田中邦衛や宍戸錠が裕司のメンター的な役で場面は少ないが印象的な演技を見せる。宍戸錠なんてセリフがなくほとんどモンタージュ・シーンなのに存在感を見せつける。
しかし、本作で一番輝いてたのは吉夫役の山田辰夫さん。
メジャーデビューが決まった裕司に取り残され、ライブで裕司目当ての客に大ブーイングを浴びる吉夫。
客の1人にラーメンを投げつけられ吉夫はバチ切れる。そして

「うるせー!てめぇ見てぇーな芋は民謡酒場にでも行け💢」😡🎤
「そこのブス!フォークダンスでも踊ってろ💢」😠🎤
「パタリロ!、てめぇはエイズを持ち込むな、オカマに明日はねーぞ💢」🤬🎤

と今は絶対地上波不可能なプリミティブすぎるパワフルな罵倒を連射して客と乱闘になる。しかし、『パタリロ!』=ゲイって浸透してたんだね、ヤングは意味わからないだろうけど笑
これが転機になり自分を取り残してスターになった裕司と亜美への恨み節と罵倒が受けて毒舌芸人としてブレークする笑
このブーイング客罵倒からの乱闘と毒舌芸人としての罵倒ライブのシーンが本当にかっこいい!
怒りと恨みと絶望をユーモア含んだ罵倒に乗せて叫ぶ辰夫さんは破滅型のパンクロッカーその物で『爆裂都市』の遠藤ミチロウさんやG.G アリンような破壊力とキレがあった笑 それとケイジの切れ芸にも匹敵する瞬発力も感じた。なのでケイジ者にもこのシーンは見てほしい。
山田辰夫さんと言えば何と言っても、右翼も暴走族も敵に回し狂おしく叫び暴れる『狂い咲きサンダーロード』が代表作だけど、本作はそれに並ぶな。

セイントフォーの『ザ・オーディション』みたいなとんでもアイドル映画の匂いがしたから、そっち系を期待して観たのでいい方向に裏切られたな😏

本作は吉川晃司と大森一樹監督の民川裕司3部作の1作目で『ユー・ガッタ・チャンス』『テイク・イット・イージー』の2本の続編がある。
続編なら山田辰夫さんの吉夫も出てくるのかな?ならば観たいが。
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