アラサーちゃん

或る夜の出来事のアラサーちゃんのレビュー・感想・評価

或る夜の出来事(1934年製作の映画)
4.0
父と喧嘩して家出をした大富豪の令嬢エレン。マイアミからニューヨークへ向かいながら、世間知らずのエレンは鞄をひったくられたりバスに乗り遅れたりとハプニングに見舞われる。しかし、彼女の素性を見抜いた落ちぶれ記者のピーターは、旅の世話をする代わりに特ダネを提供するよう彼女に交渉する。1934年、米。

最悪な第一印象からはじまり、すったもんだを経て、お互いになくてはならない存在になっていく。スクリューボール・コメディの典型、今や王道の恋愛パターンですが、こうして古典的な教科書のようなラブコメを鑑賞すると、素晴らしすぎて、幸せで言葉にできない。こんな傑作を産んでくれてありがとう。

この王道パターンについてくるサブ要素が、婚約者の存在や結婚式、男の職業等ハラハラさせてくれるに充分で、私がクラシック映画オタクということを抜きにしてもいちいち面白いエピソードばかり。
ロードムービー的な面白さも含め、サックリしたラブコメディ感が軽快で楽しい。

シークエンスがどれもこれも愛しいです。写真は、「いかにしてヒッチハイクを成功させるか」を世話役ピーターが箱入り娘エレンに社会勉強として教示するシーンのひとつなんですが、この展開もとても面白いです。

あと、はずせないのがこれ。
バスが大雨で立ち往生してしまい、モーテルに泊まることになるが、新婚カップルを偽装する二人は同室になる。そこで二人が考えたのは、エレンは貞操を、ピーターは男の面子を保つために2つのベッドのあいだに吊るした毛布。それが通称「#ジェリコの壁」。
この即席でもろい壁こそ二人の心理的な、物理的な隔たりとしてあらわされるんだけど、ほんと上手いなーとため息でちゃいます。なんて素晴らしいアイテムなんだ。ラストの使い方とてもいいです。

女子目線として語るとすれば、エレンに時々いらだつけれど、やっぱり自分の知らないものを知ってる男、自分を叱ってくれる男には惚れちゃうね。