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トゥルーマン・ショーのchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

トゥルーマン・ショー(1998年製作の映画)
4.5
これほどまでに「今だからこそジワる映画」という言葉がぴったりの映画はないのでは?GAFAの出現により世界中がアメリカン・ドリームと大量消費主義で毒されている現代をまるで予見したかのよう!

おそらく製作陣は特に未来予想をするつもりはなく、MTVのThe Real Worldなど90年代に大流行した元祖リアリティ番組から着想を受け、その後ITの流れでこれらのテレビ番組と出演者が担っていた役割をSNSとインフルエンサーが引継ぎ一般化・過激化したというだけなのかもしれませんが、今観るともう現実感があり過ぎてゾワゾワしてしまいます。

ジム・キャリーでコメディと思いきや楽しい感じは全然なく、がっつり重めのドラマ作品というか、むしろ皆様書かれている通りホラー味さえ感じてしまうのは、やはり現代の我々が彼の置かれている状況を身をもって体感しているからではないでしょうか?

純粋な心で自分の思うように生きていると思っていたトゥルーマンが、実は自分の人生の全てが自分の想いとは無関係にテレビ向けにコントロールされていることに気づき始め...

着想元になっている90年代のリアリティ番組では、トゥルーマンはもちろんそれら番組の出演者。つまり当時としては、トゥルーマンとは限られた一部の人の話で、しかも彼らは番組出演をきっかけに有名になろうと自ら志願してその立場にいる。

それが現代になると、まさに誰もが意思に関係なくトゥルーマン!生まれた頃から親の出産報告にはじまり、SNSを通して全世界に自分をさらしながら生きるうちに、常にSNS・世間にどう映るかという視点にコントロールされていく。SNS「映え」のカフェメニューなんてその最たるところですよね。自分が心から食べたいケーキがあるからその店に行くのではなく、SNSで世間に見てもらうためにカフェとメニューを選ぶ。いや、カフェなんて些細なもので、就職や結婚などの人生の重要な局面までも、「自分の心からの望みではなく他人からどう映るか」という潜在意識に多少なりとも影響されていることを否定できる人はいないはず。

本作のテーマはアメリカン・ドリームと大量消費主義と一般に言われていますが、これもGAFAの登場により現代でより過激化しとるよね。アメリカン・ドリームを叶えた成功の証として買った高価な靴をiPhone(A)で撮影してインスタ(F)にアップし、それを見た人がGoogle(G)で検索してAmazon(A)でポチれば次の日には届く。そしてそれをまたアップして... Filmarksでこの文章打っている最中だって、画面には広告が代わる代わる出てくる。なんかむしろこの映画の中の番組内宣伝なんて、現代からみればかわいいもんに思える。

もちろん、その反発としてミニマリズムおよびデジタル・ミニマリズム運動が起こったものの、皮肉なことにこれらのムーブメントも最近、一過性のブームとして"消費"され、定着せずに失敗に終わった典型例と言われて久しい... というわけで、本作を昔観たっきりの方は、ぜひ今もう一度観てみてくださいな。トゥルーマンが自分のこととしか思えず、下手なホラーよりゾッとするかもしれませんよ😱
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