KnightsofOdessa

冬物語のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

冬物語(1992年製作の映画)
4.5
No.850[確かにちょっと猫っぽい] 90点

ロメールに関しては意外と観ていて、『獅子座』から"六つの教訓物語"は全部観た。ただ、続く"喜劇と格言劇"は『海辺のポーリーヌ』『満月の夜』と立て続けに合わなかったので『友だちの恋人』だけ観て立ち去った。加えてアマンダ・ラングレ目当てに『夏物語』も観ていて、自分でも驚きだが11本も観ていたことになる。ちょっと感動。ということで2年ぶりのロメールはシャルロット・ヴェリ目当ての本作品にすんなり決定した。理由は横顔がリンダ・カーデリーニに似ているから。スカートよりも仕事着のパンツ姿の方が似合っていたし、何なら冒頭の薄着のほうが私は好きだがね。

猫。そう、猫。自由に生きるフェリシーの生き方は猫そのものである。人間で言えば"気分屋"とでも呼べば良いのか。御託を並べて理想を語りつつ、好きでもないことは続けようとはしない。そりゃそうだ、それが正しい。そんな強さを持つ反面、どうしたって男性に近付いてしまう弱さ(というか猫っぽさ)も併せ持った女性と言えるだろう。ただ、個人的に彼女の生き方は自由と自分勝手の端境を往来しているように思えるので、傍から見ている限りでは彼女を応援できるが、巻き込まれたら堪らんなぁと。だって、"本当に好きな人じゃないと暮らせない"ってフェリシーは言うけど、それはマクサンスだって同じだったはずなのに、彼女の言い分は映画として正当化されるのに対して、おっさんの言い分はサラッと流される。おっさんには適用不可な理論なのか、それともそもそもおっさんに味方するつもりがないのかは知らんが、こればっかりは同じおっさんとして許容し難い。

映画は散々"恋の現実"として、冴えないおっさんたちを相手にあーでもないこーでもないと理論を捏ねくり回し続け、"運命の愛"を待ち続けた猫ちゃんに対して、理想が舞い降りるありえないラストを迎える。シャルルが理想像のまま現れるのは"嘘やん"って感じだが、この手の"運命の愛の幻影に人生の時間を無駄に消費しちゃった"系の地獄の映画はジャック・ドゥミ『ローラ』やサボー・イシュトヴァン『Lovefilm』など名作が既に揃っているからお伽噺めいた話もいいのかもしれない。ただ、映画は体の良いところで切れているが、結局シャルルにも幻滅するんだろうことは想像に難くない。まぁそれで良いんじゃないすか。私は多分犬派なんで。
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