ひでやん

オテサーネク 妄想の子供のひでやんのレビュー・感想・評価

オテサーネク 妄想の子供(2000年製作の映画)
4.0
渇望の具現化と、おとぎ話の映像化。

不妊に悩む夫婦が、赤ん坊の形に削った切り株を我が子としてかわいがるダークファンタジー。序盤から夫の幻覚が強烈。水槽に網を突っ込んで赤子をすくい、新聞紙に包んで客へ渡したり、スイカを切ったら中に赤子でスイカ太郎。この強烈なイメージは夫の強迫観念だろう。

ただの木。それがストップモーションによって命を宿す。実写の世界で唯一コマ撮りされる動きが不気味だ。前半はホラーク夫妻の物語で、妻の溺愛ぶりや夫の憔悴が巧く描かれている。逆三角形の点や線が顔に見えてしまうシミュラクラ現象というものがあるが、妻の錯覚認識はその極み。渇望→錯覚→妄想→溺愛の妻に対して、お手上げ状態の夫が気の毒。

隣人の娘がアップで映し出される度に、「観察」し「目撃」する少女の瞳が強調される。そして後半では少女の視点に切り替わり、親が交代する展開が面白い。少女がチェコの民話を読む事によって、これから起きる惨劇が目に浮かぶホラー。何もかも飲み込む化け物、その正体は人間のエゴなのかも。

オテサーネクの「敵」は、その存在を知らない者であり、周囲は皆変わり者。お節介だったりロリコン爺さんだったり。そして味方である夫婦も少女も狂ってる。マッチ棒で「ご飯」を決めるシーンが怖ろしい。で、不快な食事シーン。ドロッドロのスープを皿にベチャッ。目玉焼きをジュルルル、チョコからトロリと出る精子のようなクリーム、哺乳瓶の濁った色…。全部マズそうで食欲がなくなった。参ったぜ。
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