氷雨水葵

ハート・ロッカーの氷雨水葵のレビュー・感想・評価

ハート・ロッカー(2008年製作の映画)
4.2
2023年82本目

中毒性にはご注意を

◆あらすじ
2004年夏、イラク・バグダッド郊外。アメリカ陸軍の爆発物処理班・ブラボー中隊に、新しい班長ジェームズ(ジェレミー・レナー)が赴任する。

ジェームズの型破りなやり方に戸惑う部下サンボーンとエルドリッジ。

彼に不安を募らせるなか、3人は過酷な任務を切り抜けていく―――。

◆感想
ジェレミー・レナー主演&アカデミー賞6冠の本作、実は初見。観よう観ようと思いながら流れてしまい、今日に至ります。

最後まで観た感想としては「戦争映画なのにあっさりしてる」でした。しかも、爆弾処理班の友情や信念、人間ドラマなどが描かれるかと思いきや、まさかの最後に残るのは戦争に対する’’中毒性’’ときた。ジェレミー・レナー演じるウィリアム・ジェームズ軍曹を中心にストーリーが進むわけですが、爆弾を物ともしない人間性にびっくり。ブラボー中隊での初任務においてはタバコを吸うし、スモークを投げるし、ロボットではなく自分で行くと言うし。無鉄砲なだけなのか、ほんとうに死を恐れないのか、軍人にしては珍しい人種に思えました。序盤に出た字幕「war is a drug.」の通り、ジェームズは戦争中毒者だったのかもしれませんね。さすがに爆弾の部品を集めたりしないよね。戦地から戻って、恋人との生活に馴染めないジェームズを見て「そういう感じね」と思わずにはいられない。

あっさりしているとは言ったものの、そこはやっぱり戦争映画。しかも爆弾処理班の話だけに、緊張感がハンパない…。ワイヤーを切っていくシーンはドキドキしますし、重々しい雰囲気も漂っていて息が詰まりそうでした💦爆弾を解体しているのはジェームズなのに、視聴者までもがその場にいるような気分になって、呼吸音や汗を間近に感じるほど。その分、解体が終わった後は謎の達成感&解放感に満たされ、どっと疲れがでる(褒めてます)。
ほかの戦争映画みたいに派手な銃撃戦はなく、むしろ静かなシーンが多いので、重厚なドラマに仕上がっている印象でした。
PMCが攻撃されて、サンボーンがライフルを撃つシーンもドキドキしました。時間の進みが遅く感じられ、いつ撃たれるかわからない緊張感&不安がひしひしと伝わってきます。対物ライフル、バレットM82の重みのある音もあって、なかなかのシーンでした。

ジェームズだけでなく、サンボーンやエルドリッジの人間性もちゃんと描かれているのが高評価。話が進むにつれて、ジェームズとの関係性の変化がわかりますし、戦争映画ならではのリアルな演出だと思います。型破りな行動をしつつも、ジェームズが仲間のことをしっかり気にかけ、言葉をかけているのがよかったです。
氷雨水葵

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