緋里阿純

ダーケストアワー 消滅の緋里阿純のレビュー・感想・評価

ダーケストアワー 消滅(2011年製作の映画)
3.7
2011年のB級SF作品。
以前、確かテレビ東京の深夜帯でO.Aされた際に鑑賞したはずなのだが、すっかりmarkし忘れていたので、復習の意味も兼ねて再鑑賞。

ビジネスのチャンスを求めて、ロシアの首都モスクワにやって来たアメリカ人の若者2人。しかし、自分達のアイデアをやり手実業家に横取りされ、仕方なくクラブにてネットで知り合った同じアメリカ人女性の2人組と飲むことに。やがて、例のやり手実業家も彼女連れで現れ、険悪なムードに。すると突然、空から謎の発光体が降下してくる。地上に降り立ち、姿が見えなくなったそれは、人々を次々と灰にして消滅させる。生き残った5人は、生還の為見えない侵略者の目を掻い潜り、生存者を探す事にーー。

B級SFながら、主要キャスト陣にエミール・ハーシュ『ローン・サバイバー(2013)』、オリヴィア・サールビー『ジャッジ・ドレッド(2012)』、マックス・ミンゲラ『ソーシャル・ネットワーク(2008)』、レイチェル・テイラー『トランスフォーマー(2007)』、ヨエル・キナマン『スーサイド・スクワット(2016)』と、意外と豪華なメンツが揃っている。
そんな中で、ロシア人少女のヴィカを演じたヴェロニカ・ヴェルナドスカヤのみ、後のキャリアがロシア国内に留まってしまっている様子なのが惜しい。本作一キュートだったので、他の出演作があれば鑑賞してみたかったのだが。

エイリアンに関しては、電磁波によるシールドによって見えなくなるという『プレデター』の光学迷彩的要素、また、それによる電子機器等の無効化という設定。主人公ショーンの機転によって、ガラス等電気をシャットアウトする物質によって姿を隠し、電球を散りばめて敵の位置を探る。途中登場する電気技師が発明した電磁波砲によって、同じく電磁波をぶつける事でシールドを破り、攻撃のチャンスを得る等、対処法まで含め意外としっかりとした作り。

中盤で出会うやたらと有能な電気技師や、後半でショーン達を助けてくれるロシア軍のレジスタンスが頼もしく、それぞれに見せ場があって皆カッコいいのもポイントが高い。
ラスト、人類の勝利に希望が見える締め方によって後味も良く、この手のSFとしては珍しいくらい綺麗に幕を閉じる。

低予算なので、前半で街の人々が消滅してからは、限られたメンバーのみによるスタジオでのグリーンバックとセットによる撮影であろう点や、姿を現したエイリアンのCG表現の安っぽさ等に、そうした予算的都合が見えるのが涙ぐましい。
とはいえ、人々が消滅し灰だけが残されたモスクワの街、アウトレットに突っ込んで大破した旅客機等の絶望感を演出する画作りは中々。
ただし、エイリアンとの攻防をもう少し見せてほしかったのは確か。特に、潜水艦の救助現場を目指す際の地下鉄では、単に仲間の犠牲を描くだけではなく、あそこでショーンが電磁波砲を使って敵のシールドを無効化し、レジスタンスによる撃破と、エイリアンに対する初勝利を演出するには打ってつけのシチュエーションだったと思うので惜しい。

あくまでB級SFだが、物語やエイリアンの設定の作り込み具合、ジャンル映画的なお約束、矢鱈と優秀な脇役達と、意外にもちゃんと見られる作品として仕上がっている。90分というコンパクトな尺も、サラッと鑑賞するのに適しており、侵略者モノとしては佳作といったところ。
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