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リービング・ラスベガスのGreenTのレビュー・感想・評価

リービング・ラスベガス(1995年製作の映画)
3.0
切ない話ですなあ。

ニコラス・ケイジ演じるベンは、どうやらハリウッドの脚本家かなんからしい。アル中で、昔の映画仲間がたむろってる高級クラブみたいなところで金の工面をしているんだけど、「もう過去の人」って感じが切ない。

これが最初から売れてない作家だったらまだ良かったのかも。一旦売れちゃって、いい気になって生活していたら売れなくなってきちゃって、それでアル中になっちゃって、家族には去られるし、ちゃんと働けないから仕事も失う。

悲しいのは、もうベンは自分を立て直そうって思わない。好きなだけ酒を飲んで死のうって思う。

という決心をして、LAの家を捨て、ラスベガスに引っ越すのだが、「なんでラスベガス?」って思った。したら、ラスベガスは24時間酒が飲めるかららしい。普通の場所では、バーは朝2時には閉まっちゃうし、アルコールを売り始める時間に法律的なしばりはないらしいんだけど、朝早くから飲んでいると、劇中にもあるようにバーテンダーから説教されたりするらしい。

ベガスは24時間飲んでてオッケー!

そこで出逢う、娼婦のサラ。

この人が悲しい存在なのだよなあ。

昔LAにいたらしいから、多分、女優になりたかったんじゃないかなあ。すごいキレイだもん。でも悪い男に捕まって、ラスベガスに逃げてきたけど見つけられて、DVされて、お金も取られて。娼婦の仕事にもなんとかプライドを見出そうとしているけど、やっぱりゴミみたいに扱われている。

ベンはサラを$500ドルで買うのだが、セックスしなくていいから話をしようって言われ、サラはひと目で恋に落ちてしまう。

みんな自分を性の奴隷のように扱ってきたから、ベンが心の繋がりを求めてきたことが刺さったのかなあ。

でもベンは、酒をやめる気はない、自分はラスベガスに死にに来た、それを止める気はないってハッキリ言う。

自分という存在のために生きようと思ってくれない男でも、それを受け入れてでも一緒にいる時間が貴重だと思えるって、これって純愛だなあ〜と切なくなる。

サラを演じるエリザベス・シュー、この人どこに行っちゃったの?ってくらい素晴らしい演技をしていて、ニコケイとのケミストリーもすごい。娼婦とアル中の恋愛なのに、お互いを利用しようとかそういうところは全くない。それは2人とも、他にはなにも残っていないからなのかなあ?残された時間が少ないからなのかなあ?

ニコケイのアル中演技がすごくって、もう手とかブルブル震えちゃって冷汗かいてすごいのに、お酒飲むとピタ!っと止んで楽しそうに振る舞うようになる。だったら、ずっと飲み続けていれば楽しくすごせるじゃん、って思うけど、時々記憶なくなって暴れたり、禁断症状出たり、ゲロ吐き続けたり、すごいリアル。

と、思っていたら、このお話の原作を書いたジョン・オブライエンって人は、自分もアル中で、この小説が映画化されると知った数週間後に拳銃自殺したんだそうだ。家族はこの小説を「ジョンの遺書」と呼んでいて、自分もライターであるお姉さんのインタビューを読んだんだけど、「これはジョンのファンタジー。飲み続けて死ねる、その時美女が傍らにいてくれるなんて、ジョンの理想の死にかた。現実はこんな楽じゃない」と言っていて、「映画でも十分辛いよ!」って思った。

でも確かにそうだよな。アル中で絶対酒辞めないなんて言っている男に尽くしてくれる女がいるわけない。女がもう何も残ってない、自尊心さえズタズタにされている人だからこうして最後の時を過ごしてくれるんだろうから。だって、ベンが死んだ後、どうするの、彼女?アパートも追い出され、カジノも出禁になって。

ストレートに言うと、「アル中に都合のいい女」なんだろうな。

ちなみに映画音楽がムード歌謡?というか、「スティングの『イングリッシュマン・イン・ニューヨーク』みたい」って思ったら、本当にスティングが歌っていた。
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