Mikiyoshi1986

パパは、出張中!のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

パパは、出張中!(1985年製作の映画)
4.2
11月24日は旧ユーゴスラビアが育んだ名匠エミール・クストリッツァ監督の63歳のお誕生日です!
おめでとう!ウンザ!ウンザ!

クストリッツァの長編2作目にして、カンヌ国際映画祭で見事パルムドールを受賞した出世作『パパは、出張中!』

1950年のサラエヴォを舞台に、少年マルクの目線から激動の時代に身を置く家族の姿をノスタルジックに描きます。

西側にも東側にも属さぬ新たな社会主義国家を目指していたチトー政権下で、その抑圧的なイデオロギーに翻弄される家族たち。
その一方、サッカーが大好きで時折夢遊病もかます次男坊マルクの無垢な目線は、一層その時代背景を浮き彫りにしていきます。

些細な政治的発言で当局から流罪にされてしまい、子供たちに"出張"と言い残して去る父親を常連俳優ミキさんが好演し、同じくミリャナもその妻役で出演。

そんな最中マルクは割礼や初恋、別れなど様々な経験して少しずつ成長してゆくわけですが、
オープニングショットで大樹の下にいたマルクがエンディングでは大樹を飛び越えてゆく姿こそ、
少年の通過儀礼を象徴的に描いていると云えるでしょう。

義兄でさえ国家の為に肉親を裏切る恐ろしさ。
またミキの好色キャラやジプシー音楽、結婚式など多くのプロットは以降のクストリッツァ作品を形成する雛型となっています。

そしてこの小市民のストーリーは手を変え品を変え、より権力に親い物語『アンダーグラウンド』へと繋がり、
結果二度目のパルムドールという栄誉にも輝くことに。

ちなみに長男役を演じた幼きダヴォール・ドゥイモヴィッチはその後『ジプシーのとき』の主人公や『アンダーグラウンド』のバタなど印象的なキャラを演じてきたものの、
若くして首吊り自殺を遂げてしまったのは大いに悔やまれます。
また彼が劇中で映画のフィルムをこつこつ収集しているところからも、そこにクストリッツァの幼少時代が投影されているとも云えそうです。
Mikiyoshi1986

Mikiyoshi1986