伊達巻

人情紙風船の伊達巻のレビュー・感想・評価

人情紙風船(1937年製作の映画)
3.9
はじめから別格な印象を受ける。暗いだろうなと構えていたら歌ったり踊ったりでめちゃくちゃ楽しくて良い意味で裏切られる。首吊りから始まって最後に至るまで内容は暗いんだが人々の遣り取りが面白くてどよよんとした重たさはあまりない。むしろ、そうした雰囲気の中でなおキレを持つ絶対的な重みというものが静かに描かれるような映画だった。繰り返しあるのが小径を挟んだ長屋の一点透視の図で、あのぎゅっと生活の詰まった感じにワクワクしちまう。紙風船、少しでも力を入れて触ったらつぶれてしまうから柔らかに掌の上で浮かせたり軽く打ったりして遊ぶ。だが構図の中で落ちている紙風船には軽さとも重さとも判別し難い不思議な重量があって、側溝に落ちるところもなんだか奇妙な感じがする。そこに人情の重みなどを見出そうとしているのかもしれないが、本来の紙風船の軽さに裏切られているような。意外と話がややこしくなってくるあたりから記憶が曖昧なところがいくつかあるし、終盤たぶん一番大事であろうところをガッツリ寝て見逃したので要再見要追記なんだが、総じて感心できた映画
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