伊達巻

赤ちゃんに乾杯!の伊達巻のレビュー・感想・評価

赤ちゃんに乾杯!(1985年製作の映画)
5.0
男は何も生み出せない。男に存在価値はあるのか?そう信じたい、そう語るジャックの姿に見覚えがありすぎて死ぬほど苦しくなってしまった。これコメディだしもしかしたら笑うシーンだったのかもしれないけどジャックの疲れ果てた表情が哀しすぎてどうしようもなかった。ジャズの流れるめちゃくちゃダンディな雰囲気から始まって、男3人の素っ裸で終わる。マリーがいなくなって味わったことのない喪失感に駆られるおっさんたち。凝り固まった「男らしさ」の軛を赤ちゃんの笑顔とおっさんの愛で軽やかに解いてゆく。いつまで経っても抜けることのない男のガキっぽさを哀れみの視点で部分的に肯定しつつ、大切なものを見失うなと教えてくれるよう。どうしようもない「男らしさ」というのは絶滅されないんだけど(保育サービス協会の「ポラン」とのギリギリの口喧嘩はそれに限った話じゃないだろうけど)、このやさしさのある塩梅もまた真実なんじゃないかと思わされもする。荒れ果てた部屋すら忘れて血眼で赤ちゃんを探すシーンがあまりにも美しいなと思った。かわいい赤ちゃんのモザイクとぜんぜんかわいくないおっさんのチンコに笑う。撮影も素晴らしい。見惚れてしまうショットばかり。めちゃくちゃ面白かった
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