山岡

疑惑の山岡のレビュー・感想・評価

疑惑(1982年製作の映画)
3.0
松本清張原作、野村芳太郎監督作品のサスペンス作品。主演は桃井かおりと岩下志麻。

あらすじは以下のような感じ。
深夜、富山新港湾の海面に突っ込み、沈んだ乗用車…乗っていた夫は死亡、妻の桃井かおりは地元民に救助される。しかし、この妻が前科持ちであったこと、事故の直前、夫に多額の保険金をかけていたことから、殺人容疑で逮捕。マスコミは妻の過去や人間性などをスキャンダラスに報道し、その煽りを受ける形で、妻の弁護士も、公判の最中に突如辞任してしまう始末…誰もが彼女の弁護を避けようとする中、やり手の女弁護士、岩下志麻が国選弁護人として仕事を引き受ける…。果たしてこの事件は事故なのか?殺人なのか?桃井かおりは、シロか?クロか?

あらすじを見るとべらぼうに面白そうなんだけど、あらすじ以上のマジックが起きていなかったように思う。

原作は未読だが、この映画は特に、容疑者の桃井かおりと弁護士岩下志麻の関係にクローズアップしたものだそう。確かに、裁判という特殊な状況下で個性女優の2人の間に絆のようなものが徐々に生まれていくさまは見ることができるが…例えば関係性が出来上がったおかげで、なかなか口を割らない桃井かおりが岩下志麻だけにポロっと証言し、それが事件解決のきっかけになる…といったような展開が一切なく、サスペンスとしての面白さに欠けると思う。

ラスト、岩下志麻がある人物から決定的な証言を聞き、それが事件の顛末が明らかになるきっかけになるのだが、その証言に至る、流れが余りに急すぎる…法廷サスペンスで1番大事な肝を外してしまってると思う。


サスペンス映画として優れた作品ではないけど、いくつか見所もある。
まず、真実とは全くかけ離れたところで容疑者の人物像を面白おかしく書き立て、私刑を下そうと加熱するマスコミの姿。これは正しく2010年代にも通用する普遍的なトピックだと思う。

あと、ほぼキャメオ出演のような扱いでありながら鮮烈な印象を残し、映画に重厚感を与える丹波哲郎、山田五十鈴、松村達雄など昭和の名優達の名演技。

そして、いまだ70年代の面影を残す80年代初頭の日本の空気感もパッケージングされてて、ある意味そこが1番の魅力かもしれない。

テレビの2時間ドラマを見る感覚で鑑賞すれば、それなりの満足感が得られると思う。
山岡

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