ピッツア橋本

イゴールの約束のピッツア橋本のレビュー・感想・評価

イゴールの約束(1996年製作の映画)
4.4
"イゴールは約束を果たした"

昼間は自動車整備工をしつつ、実は父と一緒に諸外国からの不法労働者の住居や身分証の斡旋をしながらド底辺を暮らす少年イゴールを追ったドラマ。90年代フランス映画。
監督はカンヌ映画祭の大御所の本作が長編デビュー作なのかな?


徹底的に救いがない。特に不法労働者側の黒人一家の悲劇がストーリーの中核となるが、これがあまりにも酷い。夫が警察のガサ入れから逃げそびれて転落死したあたりから本当の生き地獄が始まる。もう幸せどころか、彼らが人並みに生きれるビジョンすら見えない。
奥さんのニワトリの臓物占いによる「主人は生きてるわ!」にはそこら辺のホラー映画以上に背筋が凍った。

イゴールの父親がゲス過ぎる。とにかく息を吐くように嘘をつく。滞在者のピンハネは当たり前、事故死した黒人も身バレを怖がって、こっそり死体をコンクリ詰めにして隠蔽し、残された家族には知らせない。
息子にタバコと酒を与え過ぎ苦笑
それも全部この街で生きるために必要な生存戦略といえばそこまでなのだろうが、いつか誰かに刺されてもおかしくない危うさの中に身を投じている。

だが1番の驚きはイゴールは10代半ばにしてもうそういった超劣悪な環境を受け入れていることだと思う。

タイトルの"約束"とは黒人の夫が今際の際でイゴールに「妻と子供を頼む」と遺した事だ。

イゴールはその約束を今思いつく誠心誠意を持って果たそうとした。
俺ならラストのアレは口が裂けても言えない。
例え人並みのちゃんと約束を果たしたイゴールはもう立派な大人だ。

人生、生きてるだけで戦いなのだなと感じさせる、とても厳しい映画でした。
ピッツア橋本

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