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椿三十郎のmayumayuのレビュー・感想・評価

椿三十郎(1962年製作の映画)
4.0
映画館で織田裕二のリメイク椿三十郎は観たことがありましたが、こちらの黒澤監督のは実はまだ未見でした。
黒澤監督のをご覧になった方はフィルマでは織田版はかなり不評のようなのですが、
見た当時は別に悪いとは思いませんでした。しかしあまり深みは感じられず、珍しくパンフレット購入せずだった記憶です。

神社で集まる9人の若侍。汚職に関する意見書を城代家老に提出したが受け入れられず、それではと大目付に相談したところ色よい返事をもらったという。
そこに物陰から一人の浪人が現れ、大目付が黒幕であると助言。浪人は若侍たちの危うさを懸念し、お家騒動に巻き込まれていく。

黒澤・三船はまだ羅生門しか鑑賞していなくて、そもそも古い映画は詳しくなく、以下はただの感想です。
リメイク椿三十郎はほとんどストーリーを覚えていなくて、初めて見る映画のように見ることができました。
1962年!もう60年前の映画なのですね。もちろん白黒ですが、あまり古さを感じず見ることができました。
加山雄三や田中邦衛が出ていて、めちゃ若い。田中邦衛は滑舌も良くて笑、真面目で融通のきかない若侍ぶりが新鮮でした。
意外にコミカルで驚きました。金魚のフンのようについてくる若侍たちとか、あわあわ怯える敵方の古狸侍とか。のんびりしすぎている奥方とお嬢さんとか。お正月に見るのにぴったりでした。

三船敏郎は、羅生門でも思いましたが、なんか存在自体がギラギラしている。
そこにいるだけで、目力と佇まいから熱が発せられている感じがします。
経験少ない若者たちが、短い逢瀬で信用してしまう気迫、そこに同居するユーモアはやはり三船が演じるからこそなのかもしれないと思いました。
殺陣は素早くてあっという間に終わってしまうのですが、かえってリアルというか‥
20人くらいあっという間に一人で斬ってしまい、驚いて声も出ない若侍たちに向かって
吐き捨てるように「お前たちのせいで無駄な殺生をした!」というセリフに悲しみと怒りがちょっと滲むところとか。
のんびりした人道主義の奥方の前でふすまの字をなぞって居心地悪そうにしているところとか。
いいですね。
圧巻なのは仲代達矢との最後の対決かなあ。あっという間に終わってしまうけど、なるほど、キルビルとかに影響しているのはこれかな、なんて思いました。
三船と仲代、すごい目力でした。若い頃の渡辺謙とかもああいう目力を感じたな。

織田三十郎は別に悪かったとは思わないけれど、あの存在感を肩代わりするのはなかなか難しかったってことなのかな‥
あの存在感がないと、若侍がついて行くところや、20人斬りのリアリティがなくなってしまうのではないでしょうか。
しかし、赤い椿と白い椿は白黒ではわからないので、織田版も非常に画としては美しかったように(記憶おぼろげですが)思いました。
むしろ、リメイクするなら岡田准一とかがやったら結構説得力が出たんじゃないかなんて思っちゃいました。
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