この世界はみな繋がっているようで、繋がっていない別の世界がある。
彼はトイレの清掃に誇りを持っていて、決まり切った日常のスキマのささやかなことに喜びを見つけるのが得意なようだ。
‥なんて言うと、ちょっと外れている気がする。
なんか、そういうことだけじゃなくて‥
実に滋味深い映画だと思いました。
毎日のルーチン。そしてきっとそのルーチンを愛しながら暮らしている感じがするのに、乱されても彼はちっとも煩わしそうじゃない。むしろそれすら微笑みながら受け止める。そんな彼の心の芯にあるものはなんだろう。
仕事を愛し、緑を愛し、木漏れ日を愛し、カセットテープの音楽を愛し、読書を愛する。無口な彼を行きつけのお店のスタッフはみんなわかっていて、過度な接し方はしないが親しげに接する。
役所広司の微笑みがすごい。
耳を触ったり、お風呂に沈みながら。決まっているはずの彼の日々に今日紛れ込んできた何かを思い出しながら。最後は涙を浮かべながらその微笑みが長写しになる。
陰踏みに誘う笑顔。お茶目な雰囲気が漂う。
ある時見せた怒り。彼は人間である。
慟哭。明らかにならない今までの人生が透けて見える。
ヴィムヴェンダースさんは初めて。この映画は好きだったから、他のも見てみたいと思いました。でも静かな作風だから、家族がいない時に没入して観たい感じだなぁ。
ここから少し内容に触れると思いますので、気になる方はお気をつけください。
麻生祐未が上手い。ほんの少ししか出てこないのに、あの侮蔑の混ざった、でも哀しみと愛が混じったような、あの表情。されるままのハグ。日本人もするかな。平山さんならするかも。
石川さゆり、そりゃ歌上手いわ。大河ドラマの明智光秀の母役も素敵だったが、この映画でも素敵だ。
ちょっとしか出てこないけど安藤玉恵のすごく頼りになる感じ、三浦友和との影踏み、とっても印象的だった。隣でお昼を食べるOLの死ぬほど冷たい視線もあれはあれで心に残った。
初めてお見かけしたアオイヤマダさんの雰囲気がすごく素敵だった。車で泣きそうになる表情良かった。
遠くからしか見られなかったが、田中民さんはやはり素晴らしい舞踏家だ。かっこいい。
東京のトイレがいろいろなトイレがあって驚きました。公園のトイレは普段なるべく避けてしまうけれど、あんなトイレなら素敵かも。そして、トイレを掃除してくださる方々がいるから、気持ちよく使えていること、忘れないようにしたいなとも月並みですが思いました。
当直が忙しかった故に早上がりになったため劇場鑑賞できました。映画館で観られてよかった。ファーストデイのためもあるのか、３０人弱くらい平日の昼間に入っていてなんだか嬉しかったです。
影と影が重なると濃くなる。変わらないなんてバカなことがありますか！
