Mikiyoshi1986

椿三十郎のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

椿三十郎(1962年製作の映画)
4.4
本日4月1日は三船敏郎の生誕97周年。

「用心棒」で斬新なサムライ像を体現した三船が再び黒澤明とタッグを組み、"三十郎"のキャラクター に一層の深みを添加させた娯楽時代劇の傑作。

汚名を着せられた叔父を助け出そうとする若侍9人に、凄腕の三十郎が助太刀する形で進行していく救出劇ですが、
見事な太刀さばきで30人斬りをやってのけた三船の殺陣シーンは圧巻であり、不器用ながらも自分なりの正義を貫き通すヒーローを魅力たっぷりに演じ切ります。

母娘のユルい雰囲気に調子を乱されながらも、「鞘」のくだりで核心を突かれて以降、自身の侍としての在り方を意識し出す演出は絶妙。

また最後まで緊張感を保ちつつ、仲代達矢との決闘までもっていくシークエンスはこれぞ黒澤映画の真骨頂とも云える脚本力でしょう。
抜刀前の静止状態は鳥肌モノの緩急を生み出し、歴史に残る名勝負を生み出しました。

そして本作では侍が武功をあげてのしあがる戦国の世から泰平の世に変遷し、官僚的システムに適用できぬ侍の対比を描き出しています。
それは謂わば戦後における復員兵たちの虚無を代弁しつつ、一方では戦争を知らずしてその未熟さを露呈させる若者の実像を描き出し、当時の日本の世相を反映させた内容とも云えるでしょう。
戦後の復興を遂げ、正義を以て社会の規範に順応することの大事さを説いた三船・黒澤コンビの大傑作です。
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