ドント

アウト・フォー・ジャスティスのドントのレビュー・感想・評価

3.8
1991年。ニューヨークはブルックリン。同僚をイタリア・マフィアのはぐれ者に殺された警官が捜査からはみ出し、マフィアや警察からもうまくやってくれとお墨付きをもらって、職権乱用と一方的暴力を武器に犯人を追い詰めていく。
セガール主演映画ではあるのだがしかし、本作はぅゎぁセガールっょぃ映画ではない。いややっぱり強いんだけどね。メッチャ。やっぱり素手でも銃持っててもアホみたいに強いんだけどね。けどこれはあくまでも、悪徳のはびこる移民の街を舞台にしたハードボイルドな映画であると思うのだ。
警官の死体の上に捨てられた紙片のようなもの(何故か消失している)の謎、警察やマフィアが登場するにも係わらず結局は小さな人間関係に終息する。そして今回のセガールは各組織には筋を通しつつ自由に動き、情報を聞き出すためには何でもやるキャラで、警官と言うよりはむしろ私立探偵のように見える。そのあたりも含めてポリスアクションというよりハードボイルドの世界観に近い。
言うまでもなくセガールの暴力は適宜炸裂するのだが、その他に頭に残るのはブルックリンのさびれた街並みや、音楽と共に台詞なしでマフィアと警察の犯人探しが並走し交差するシーンなどである。主人公が自分の父親について語る部分に尺がとられているのも、この映画が「街」と「人間」の物語である証左だろう。
セガール性にのみ頼ることなく──そういう映画は映画で面白いけど──彼の最強性と作劇が拮抗しているのが素晴らしい。つまりセガールのセガールパワーを期待していると肩透かしを喰らう、ということでもある。物語も含めテンポや描写の切り詰め方など、60・70年代映画の臭いがする。
ドント

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