マヒロ

大列車作戦のマヒロのレビュー・感想・評価

大列車作戦(1964年製作の映画)
4.5
第二次大戦終戦間近のフランスで、撤退を試みるナチスドイツのヴァルトハイム大佐(ポール・スコフィールド)は、ついでにそれまで保護していた著名な絵画の数々を強奪しドイツに持ち帰ろうとする。美術館側はそれを阻止するため、フランス国鉄のラビッシュ(バート・ランカスター)を始めとした鉄道員たちに輸送列車の妨害を依頼する……というお話。

ジョン・フランケンハイマー監督×バート・ランカスター主演という文字面の強さだけで心躍ってしまうが、そのインパクトに負けず劣らず強烈な一作だった。
(ポール・ヴァーホーヴェン×アーノルド・シュワルツェネッガーの『トータル・リコール』の強さを彷彿とさせられる)

美術品の強奪は蛮行とはいえ鉄道員から見たら「たかが絵」でもあり、そのために命をかけるというのはリスクが大きすぎるが、それがフランスの誇りを守るためである……という理由をつけて作戦に協力することになる。
いわゆる「退廃芸術」である絵を保護していたヴァルトハイム大佐は本当に芸術を愛する心の持ち主であるとは思われるが、撤退が妨害により立ちいかなくなると次第にヤケクソになっていき、邪魔な鉄道員を殺したりとやりたい放題になっていくなど、無慈悲な性格を見せるようになる。演じるポール・スコフィールドは『我が命尽きるとも』で信念を貫き通す格好いい男を演じていたが、そのキャラクターがそのままひっくり返って悪役になったかのような恐ろしさがあった。
対するラビッシュも最初は絵を守るためだけに命をかけることに反対していたが、作戦の中で仲間を失っていき自身もボロクソになる中で、絶対に強奪を失敗させてやろうとあの手この手で妨害を繰り返す修羅の男と化していき、終盤はヒロイズムとは無縁のヴァルトハイムとラビッシュの意地のぶつかり合いみたいになっていくのが良かった。

汽車を脱線させたりぶつけ合ったり、戦闘機による銃撃・爆撃など破壊描写もかなり力の入ったリッチさで、見応え十分のアクション映画の傑作だと思う。

(2022.147)
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