クシーくん

すべてを五分でのクシーくんのレビュー・感想・評価

すべてを五分で(1956年製作の映画)
4.0
大晦日に行われるパーティを通して、一年の最後をカラフルに描いた可愛いミュージカルコメディ。

舞台は一年の終わりを迎えるノヴィ・ゴッド(ロシアの大晦日と新年を同時に祝う祝祭)のパーティの準備に大忙しのとある文化会館。
ジャズバンドや近代バレエ、ピエロのコントなどの西側的な、つまり清く正しいソビエト連邦的価値観からは堕落したものと思われる華美な出し物をことごとく否定し、つまらない代替案ばかり押し付けてくる館長のオグルツォフ。
パーティの主催を任された主人公レナと、彼女に惚れている司会進行役のグリシャは職員たちの協力のもと、あの手この手でオグルツォフを舞台から遠ざける。その合間に、新年を祝う陽気で盛大なパーティーが恙なく進んでいく一方、明るく美しいレナと奥手なグリシャのピュアな恋模様も描かれる。館内放送で告白を流されるのは笑った。
後半はジャック・タチの「パレード」みたいにタップダンスにバンドにマジック、歌と豪華な演目が楽しい。

最後にオグルツォフは私はこの件と関係ありません!とルーニー・テューンズみたいに出てくるのもユニーク。Wikiによるとこの映画は”スターリン主義の雪解け”であり、オグルツォフのキャラクター自体が古い時代の象徴らしい。それを醜悪に描き過ぎず、愛すべき三枚目として包容している所が良い。
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