ハター

恋する惑星のハターのレビュー・感想・評価

恋する惑星(1994年製作の映画)
4.5
凄かった。こうも気持ちを鷲掴みされる作品に出会えた事が幸せ。
舞台となっている香港・九龍の重慶大厦。かつて犯罪の巣窟と呼ばれた九龍城塞にも似た雰囲気を微かながら醸すこの雑居地を背景に進むラブストーリー、その設定にまず気持ちを煽られます。
配役もマッチしていました。フェイ・ウォンが演じた少女のような愛らしさ。トニー・レオンが演じた根暗でピュアな男。違和感は皆無です。
そして、この作品に命を与えたウォン・カーウァイ監督の手腕がとにかく魅力的でした。ありふれた日常品や風景を非日常に仕立て上げる巧みな光と色の操作。シーンの雰囲気を最大限に引き出すカメラアングルと映像効果。ストーリー進行に不要でありながらも、容赦無く組み込んでくる大胆なカット。何から何まで”いちいち”凝っていて終始笑みが止まらない。コンテンポラリーアートを眺めているかの如く、まばたきをする隙すら与えない。全く新しい物を目にしている感覚。
台詞の言い回しも美しい。決してわかりやすいとは言えないストーリー構成の中でもしっくりくる。字幕担当の岡田壯平氏、字幕監修の横井淳子氏の仕事も特筆すべき点です。
全てが相まって感じる事ができるこの空気。何度も観れる映画、まさにそう感じました。
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