ハター

あんのハターのレビュー・感想・評価

あん(2015年製作の映画)
4.5

2つ目の窓を見た時も思ったことなんですが、この人が撮る映画は絶妙。河瀬直美の映画には不純な物を感じない。これは小津安次郎を見た時もそうだった気がします。たまに人間がつくりものに見える映画ってあるんですが、この映画にはそういったきらいがなくて、ただただ人間が美しいんですね、本当に。美男美女や絶景が出てくるわけでもないのに。

永瀬正敏は過去を背負って生きている男の像を見事に演じていました。浅田美代子、市原悦子といったナイスなキャストもちょい役でありながらも、欠かせぬ味付けとして映えています。なんと言うか、カレーの隠し味に入れる1欠けのチョコレート的な。そのカレーの肉である主役の樹木希林が見せる珠玉の演技は見応え抜群です。共演の役者を活かしながら自らを引き立てる。阿吽の呼吸ができているというか。すごいです。

郊外に構える小さなどら焼き屋が舞台でありながらも、そこにあるのは深く濃い人間のドラマ。気持ちがこもった作品は狙わずとも心を掴むものですね。

余談ですが、あんを見た後、明日に是枝監督最新作を見るために『そして父になる』を見たのですが、映画ファンの方ならご存知の通りそこには樹木希林が。そして次の日に海街diaryを見ると、ここにも同じ婆さまが・・!結局3本連続で樹木希林を拝むことに。いつのまにやら私は樹木希林フェスを開催していたみたいです。いやー夏先取り!

・・ともかく、あんは素晴らしいの一言に尽きる。
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