Habby中野

地図のない町のHabby中野のネタバレレビュー・内容・結末

地図のない町(1960年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

この頃の滾るような邦画のエネルギーはやっぱりクラクラする。
新東京の外れのバラック、貧乏と挫折と片輪たちの間に揺蕩う哀愁と諦念のダンス。そして時系列の入り組んだサスペンス─ただ一つ違うのは、この時系列の中でまだ「事件」は起きていない。我々はお決まりの、事件とその先の解決という道筋を見るのではなく、そのひたすら予感のみを感じ取り、その時へとふらつきながら進んでいく。─あの階段を上がる時の無音の緊張感─その先にある驚異の展開─!これは観客を宙吊りにしたサスペンスではなく、観客を共犯とした事件そのものだ。誰にでもそれを行う可能性はあった。誰にでも。この足下はそれほど脆い。
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