(特に古い)特撮映画は多かれ少なかれ荒唐無稽な部分はあるが、今作はその極致といってもいいのではなかろうか。突飛な設定をパワフルな特撮で支えて終始ワクワクしながら観られたものの、88分ではどうしても描き足らなかった。言い替えれば諸々のストーリーを90分弱に詰め込んだ手腕やテンポの形成は見事なのだが、ところどころダイジェストな感じになってしまったのは残念なところ。
しかし荒唐無稽やとても良し。地球の軌道など変えられるわけもなかろう(ペガッサ星人もびっくり)。南極から“押して”動かしても、気候の大変動もなく呑気に正月を迎えている様子が面白い。吸い込まれる土星の環、呑み込まれる月、外惑星まですぐに辿り着ける観測ロケットの速度etc・・。
SFは丁寧に未来を描いても、常にその時代の概念や限界に影響されるもの。それは決して欠点ではなく、むしろそこが愛おしくてたまらない(「昭和特撮」がお好きな方には共感いただけると思います)。例えば今作なら探査船隼の船内の“潜水艦然”とした様子や、物語の舞台である1980年代初頭には全く見えない街の風景など。映画の本分と、そういった邪道的な部分の両方を楽しめるなんて、素敵じゃないか昭和特撮。
前述のようにダイジェストな部分があるので、豪華なキャストも人によっては出番が少なくもったいないところも(西村晃、平田昭彦など)。水野久美、白川由美の美しいWヒロインも入浴シーンなどサービスカットはあるもののいささか物足りず。土屋嘉男は出ていないが天本英世はワンシーンながら非常に“らしい”出演。