何もかもが悪の美学にあふれていて毒気にやられる作品でした。
ナチスを題材にした映画は山ほどありますが、それを単に断罪する社会派ドラマというわけではなく、それをとりまく全ての人間の業が焦点でとにかく凄まじい内容。
ナチスが政権をとった時代のドイツを背景に鉄鋼業の財閥一家の権力争いが繰り広げられます。
実際にあった国会議事堂放火事件、ナチスの内紛(突撃隊vs親衛隊)の「長いナイフの夜事件」が出てくることや、『マクベス』や『ブッデンブローク家の人々』からも要素を取り入れた盛りに盛った濃厚な物語。
さらに一通りの性的倒錯が出てくるため胸焼けします。つまり登場人物はほぼクズか変態しかいません。
その中でも一段と儚げで危ういヘルムート・バーガーの変貌ぶりが最高でした。
なるべくしてそうなっていく一族と、ファシズムに染まっていく国。
同じくイタリアの凋落と戦争を見たヴィスコンティが描いたドイツ。
文句なしの傑作だと思います。