シミステツ

夏の妹のシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

夏の妹(1972年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

もう50年以上も前の映画なんだね。台詞回しとか「な〜んだ」ってちぇってやる仕草とか演技全般が当時感満載。

沖縄で突然の手紙が届いて、運命を感じるというプロットは甘酸っぱい青春系。しかしもう一段あって鶴男が本当に菊池家の庭先で見たのは実は桃子。素直子をガッカリさせないように鶴男に会わせないように裏回しする桃子。そんな状態でも桃子は自分に好意のある鶴男を気になってしまう。

素直子が沖縄に到着してすぐ沖縄語を1語100円で教えてくれた彼に本土の歌しか歌えないというギターの流しとしても再会し兄、妹、父、など様々な言葉を教わったり、殺す値打ちのある男を一人探しているという謎の男と出会ったり。沖縄を記念碑的に巡りながら本土との微妙な関係を描く。鶴男と桃子が草むらでまみれるような淫靡さ、複雑性を帯びていたり。

最後の浜辺のシーンはおもしろかった。殺す殺され、ヤりヤられ、など対立する関係のバイオレンス的同居、友だちとやった女がいい、エロいみたいな話とか種をごちゃ混ぜにしようとかいうところも、本人の前でするべき話ではない当時らしい滑稽さや倫理の危うさみたいのも内包しつつも沖縄(鶴)をアメリカと日本で取り合うような関係性の暗示のような。そして何がなんでも絶対に信じず鶴男に鶴男を探そうとまで言う素直子はその「ルーツ」的なものや歴史の敗北みたいなものから目を瞑る存在として機能しているようにも感じた。

武満徹の楽曲もよいし、何が良いっていうのは難しいけど沖縄の風景とともに映し出される人間たちの様子、眼差し、鶴男を通して描かれる人間模様、行間に異様に惹かれるものがある。沖縄が魅せる独特の気怠さと熱気を帯びたロードムービーでありながらメッセージ性もあって、特段ハネたな〜っていう感じで進むわけではないが居心地良く染み込んでくるし、最後の浜辺のシーンだけでも評価が倍増する名作。

「ちくしょー!沖縄なんか日本に還って来なきゃよかったんだ」

後半なんか素直子の演技がジワジワ好きになってきた。