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生きものの記録のarchのレビュー・感想・評価

生きものの記録(1955年製作の映画)
4.0
狂ってるのは社会か自分か。唯一の被爆国であるにも関わらず"水爆実験"が他人事になってしまっている日本において、その問いは重い。後に非常にかっこよくその題材を描いて見せたのが「太陽を盗んだ男」な訳だが、本作は黒澤が「エンマの前に立った時私は『生き物の記録』を作りましたと言えるくらいの作品を作ろう。言わずに居られないことを全部言おう」という言葉を残したように、どストレートに真剣に描いている。
これぞ黒澤作品に惚れてしまう点である。
本作にはこれまでとは違い、悪人と善人の対立はなく水爆を完全な悪として、善人だけの物語になっていた。それぞれの言い分に理があるのだ。

七人の侍のようなスケールの作品もいいが、こういった日本の時代性を大きく吸い込んだテーマにこそ"日本の黒澤"、そしてコスモポリタンとしての黒澤の度量も垣間見れると思うのだ。
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