イルーナ

劇場版ポケットモンスター アドバンスジェネレーション 七夜の願い星 ジラーチのイルーナのレビュー・感想・評価

3.4
1000年のうち、わずか7日間だけ目覚める幻のポケモン・ジラーチ。実にドラマチックな設定です。そんなポケモンとの、かけがえのない7日間。
パンフレットでも「観る前にハンカチのご用意を忘れずに……」と、「泣き」を前面に売りにしていました。

今回スポットライトを当てられたのは、アドバンスジェネレーションシリーズでレギュラーに加わったマサト。
最初はジラーチという特別なポケモンに出会えたことを無邪気に喜んでいたけど、別れの日が近づくにつれてふさぎ込んでいき、「こんな思いするくらいなら、会わなきゃよかった……」とまで吐露。
一見すると身勝手な発言にも聞こえるのですが、大切な人と二度と会うことのない別れを経験した誰もが心当たりのある心情です。リアタイで観た時からこのセリフがずっと忘れられなかった……
そんな彼を誰も責めないのが、優しいですね。

また、今回のサトシは頼れる先輩として描かれています。
バトル面は言うまでもなく、落ち込むマサトに不器用ながらも寄り添う姿はいいものがありました。
それなのに……次回作はマジでどうしてああなった……!

ポケモンではアブソルやフライゴンといった、人気の割りにゲームでは不遇扱いされがちなポケモンが大活躍していたのが嬉しかったですね。
それだけに、よりによってルビー・サファイアリメイクでフライゴンを徹底してネタ扱いした件は未だに許しがたい。
ジラーチは「どんな願いも叶える力を持つ」というチートぶりですが、その叶え方が「欲しいものを瞬間移動させるだけ」という力業だったのには笑いました。
メタ・グラードンは……あれどう見てもデイダラボッチや巨神兵だよなぁ。グラードン本来のイメージとのチグハグさが共感を拒む、徹底した悪そのものであることを強調していました。
ちなみにリメイクで登場したゲンシグラードンは、明らかにメタ・グラードンのオマージュでしたね。そのゲンシグラードンも色々吹っ切れた強化ぶりだったし、バトラーの研究、実は成功だったんじゃね?という声も。

EDの『小さきもの』。その壮麗かつパワフルな歌声が心に響く名曲ですが、これを歌った林明日香さんは、なんと当時14歳。恐るべき才能です。彼女はその後『キミにきめた!』の主題歌にも抜擢されていますが、それもうなづけます。
この歌はジラーチを見送る時にみんなで一斉に歌うという感動的な使われ方をしているのですが……あれを子守歌扱いするのはちょっと無理がある気がする。

しかし劇場版ポケモンに関しては、普段は上映時間短めの方がテンポが良くて好きなのですが……これに関しては例外的に、上映時間の短さが仇になったな、という感じです。
少年時代の、一生に一度の出会いと別れというドラマチックな題材なのに、その交流が途中からほぼダイジェスト。「泣き」を売りにしていた割に、別れのシーンがいまいち盛り上がらなかったのが惜しいです。
イルーナ

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