イルーナ

ファンタスティック・プラネットのイルーナのレビュー・感想・評価

4.3
フランスの伝説的カルトアニメ。
その圧倒的な奇想とキャラデザは、人によってはトラウマになりかねないもの。
青い皮膚に真っ赤なギョロ目のドラーグ人を皮切りに、ぶっ飛んだデザインの生物たちが跋扈する。
個人的に印象に残ったのは、鳥かごみたいな木の中に入った生物と、アリクイのように舌を出して人類(オム族)を捕食する鳥。
特に前者、枝のような鼻で飛んできた生物を捕食するのかと思いきや、ただいたぶって地面に投げつけて喜んでいるだけという……w
支配種族ドラーグ人は一日の大半を瞑想に費やしているという設定ですが、その目的はなんと“生殖”のためだった。
(“生殖”の仕方は意外にロマンチックで、その辺にフランスっぽさを感じたり)
ですが、不思議と懐かしさや心地よさも感じられるのもまた事実。
本作は効果音も印象的で、クリスタルの季節でクリスタルが生えたり割れたりする音がすごくきれい。
何か、絵本でも読んでいるような感覚なんですよね。モンティ・パイソンのアニメとかみたいに。
かのピクミンシリーズのアイデアは、本作の世界観が根底にあるのも納得。
人類を捕食していた鳥を技術の進歩によって逆に狩れるようになったり、(ドラーグ人視点では)圧倒的な繁殖力で脅威を与えるあたりにその風味を感じます。

上位的存在にいたぶられたり飼育される人類という設定からディストピアものっぽいと言われる本作。
しかし本作の主人公テールは別にその扱いに否定的というわけでもないんですよね。
幸運にも拾われた家庭が偉いさんの家で、飼い主のティバも彼女なりに愛情をもって育ててたから教育を受ける機会にも恵まれた。
ティバも種族が違うだけで普通の女の子って感じで、慣れれば親近感を感じるキャラクター。
(あのレシーバー、装着するだけで学習できてしかも永久に忘れないという夢のようなアイテム。正直ちょっと欲しい)
その知恵を他の人類にも分け与えることで人類の知能は飛躍的に上がっていき、ついにはドラーグ人を脅かすまでに至った……
と聞くと『猿の惑星』みたいな話だ。こっちの人類は知恵を身につけ成り上がる側ですが。
ですが本作、生存闘争的な話になって行きつく所まで行くのかと思いきや……あっさり和解したばかりか、ウィンウィンのいい関係を築いたというのが象徴的。
テールの出自を考えれば納得ですが、ここまできれいに和解しているパターンも珍しい。
あれだけぶっ飛んだ絵面ながらも、物語自体はシンプルかつきれいに完結。
この辺が、カルト作と言われながらも広く受け入れられている要因なのかもしれません。
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