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世界の始まりへの旅のsonozyのレビュー・感想・評価

世界の始まりへの旅(1997年製作の映画)
4.0
ポルトガルの巨匠、マノエル・デ・オリヴェイラ監督作。
カンヌ国際映画祭: 国際映画批評家連盟賞
東京国際映画祭: 特別賞

老映画監督マノエル(マルチェロ・マストロヤンニ)と、3人の俳優たちが、監督が育ったポルトガル北部をバンで旅する物語。
チラっとしか映りませんが老ドライバー役をオリヴェイラ監督がやってます。(当時88歳かな?お元気そう)

3人の俳優は、女優のジュディト(レオノール・シルヴェイラ)、ポルトガル人俳優ドゥアルテ(ディオゴ・ドリア)、ポルトガル人を父に持つフランスの俳優アフォンソ(ジャン=イヴ・ゴーティエ)。

幼いころ親しんだ避暑地を訪れながら、思い出を語るマノエルと、それに呼応するジュディトとドゥアルテ。

一方、アフォンソもこの地に来る理由があった。14歳で一人この地を離れフランスに渡ったアフォンソの父の姉マリア(面識のない叔母)を訪ね、亡き父の子供時代を知るためだ。
一行は、その貧しい村ルガル・ド・テゾへ向かう。

本作が遺作となったマルチェロ・マストロヤンニ。
杖を使う老いた姿に哀愁が漂いますが、過去の思い出を語る姿は、あまりに自然で自身の過去を語っているよう。

特に、ぶどう畑の柱を背負っている小さな髭男の彫像「ペドロ・マカオ」のエピソードが印象的。
地元のおばちゃんがペドロ・マカオの詩を詠み上げ、ジュディトがポルトガル語の分からないアフォンソに通訳しながらその詩を教えます。

タイトル『世界の始まりへの旅』ですが、アフォンソの叔母マリアが暮らす貧しい寒村について「この村は我々が死ねば終わる。世界の始まりに戻る。」と語られます。

バンの移動中のシーンが、走る車の後ろの道路を捉えているのが効果的で、マノエルの過去の思い出、そして”世界の始まり”に戻っていくような感覚を感じます。
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