あんじょーら

その男ゾルバのあんじょーらのレビュー・感想・評価

その男ゾルバ(1964年製作の映画)
3.6
英国紳士的な男で作家のバジルはギリシャの鉱山を遺産として受け取ったために、ギリシャのクレタ島にやってきます。その船に居合わせた非常にエネルギッシュな男ゾルバを鉱山の開発者に雇い入れたことから、2人の関係が深まっていくのですが・・・というのが冒頭です。


私のギリシャのイメージがぶっ飛ぶくらいの男(漢と書いて<オトコ>と読ませるくらいの感じでしょうか)っぷり溢れるゾルバのキャラクターも然ることながら、民衆の集団心理の凄さを見せ付ける作品でした。バジルが何故か妙にゾルバに惹かれていくのですが、その冒頭の掴みとしては今ひとつだと思いますが、様々な事件を経た上での、最後の別れを理解しつつ、ある場面は印象に残りました。奇妙な連帯感をベースにした正反対のものを共有する関係と言っても良いです。


女性役も非常に魅力的です、正直歳をとった村では浮いた存在ですらあるフランス人ホテルオーナーの女性は、可愛らしいとは何か?を分からせてくれる演技です。滑稽ですらある女性なのに、たしかに可愛らしいのです。この可愛らしさはゾルバにも通じるものがあります。非常に上手い役者さんだと思いました。もうひとりの未亡人役の女性も、気丈で激しい女性を上手く演技してくれています。


中でも集団心理の、無知の恐ろしさを感じさせる場面(2箇所もある!!)は怖いです。日本には「空気の支配」があることを知っていますけれど、これは世界の何処でもありうるのか?と考えさせられました。


ゾルバは確かに魅力的な男ですし、頼りになりますが、同時にずっと一緒にやっていくには疲れそうな男です。ある意味男の理想なのかも知れませんが。そのゾルバの中に、ある人物を教会に収めるかどうか?を問われる場面で応えるアイロニーの落差に、私は好感を持ちました。


楽天的な、とはどういうものか?を感じて見たい方にオススメ致します。