あんじょーら

オッペンハイマーのあんじょーらのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
クリストファー・ノーラン監督     ユニバーサル     池袋グランドシネマサンシャインIMAXレーザーGT


2024年公開映画/2024年に観た映画  目標 36/100です。 現在は6/34




やっと日本でも劇場公開されました。クリストファー・ノーラン監督作品ってだんだんと格式高いものになってきてますね。確かに、うちの国は原子力爆弾の被爆国ですけれど、これ、映画作品で、原子力爆弾の製作に関わった人物の1人であるオッペンハイマーの伝記映画ですよ??なんで普通に公開されなかったのか?個人的には不思議です。


えっと、最近の例ですけれど、NHKのBSでスタンリー・キューブリック監督の「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか(一応原題だと Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb )」を放送してましたけれど、キューブリックは良くて、ノーランがダメな理由がワカラナイです。多分気分の問題でしょうけれど、もう本当にこういうのは嫌ですね・・・嫌いだし頭が悪いと思います。


映画の本質とは何も関係ない話しでした、すみません。


雨が降っていて、水面に波紋が広がっていきます・・・物理学を専攻しているオッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は・・・というのが冒頭です。


いろいろ象徴的な立場の人ですし、原作があるのですが読んでないのでちょっとどのような改変があったのか?ワカラナイですし、時系列をかなりいじっていて、それは多分、過去のどの場面で、このような選択をしたから、今、この立場になっている、というのを示す為だと思われます。


だから凄く分かりやすくなっているとも言えますが、如何せん、話しがあちこちの過去に飛ぶ上に、登場人物がめっちゃ多いので、この辺の整理が頭の中で出来てないと、咀嚼に時間がかかると思います。もう少し勉強してから観れば良かった・・・せめてマンハッタン計画に関わる人の名前だけでも憶えて行けば良かった・・・


さらにもう1つは、裁判のような形式、正確に言うと、1つはオッペンハイマーの資質、というか共産主義者かどうか?に関連するマッカーシズムの聴聞会で弁明をしている場面と、さらにオッペンハイマーをマンハッタン計画に呼んだストロース(ロバート・ダウニー・Jr)を閣僚として認められるか?を確認するための公聴会の場面があり、それも同時に進んでいくために、結構分かりにくい感じになってると思います。


基本的には、オッペンハイマーの非公開聴聞会と、ストロースの公職に就くための公開公聴会の場面があり、それぞれに重要な場面で、過去を振り返るわけで、しかも、この非公開聴聞会のピークと、公開公聴会のピークを揃えようとしているので、そりゃその方が確かに映画のピークにはなると思うし、サスペンス要素も加わるから、映画的ではありますけれど、分かりにくくはなるよな、とも思いました・・・凄く言い方もくどくなっちゃう。


しかも、ストロース公聴会が現在時間軸はカラー、ココからオッペンハイマー聴聞会は過去の出来事なのに、カラー、でも過去の重要な場面だとモノクロになったりするので、このモノクロとカラーがちょっと1回観ただけだとどういう理由で分けたのか?分からなかったです・・・多分ちゃんとした理由があると思います。



それと、IMAXで観たのですが、映像の解析度の強さも確かに凄いんですけれど、それよりも個人的には音圧。音の圧力に完全に持ってかれました。これもしかすると、IMAXよりもドルビーアトモスとかの方が良かったのかも。


みんな何となく知ってる、第2次世界大戦、それもアメリカでナチスが原子力爆弾を作っている可能性があり、ナチスにそんな危険な爆弾を持たせるわけにはいかない、いつか人類が手に入れるとしてもナチスだけはマズい、という事から始まったマンハッタン計画におけるオッペンハイマーの評伝です。伝記映画です。そして、もちろん、オッペンハイマー含む科学者たちはかなり後悔しています。でも、その時はこうだった、といって責任を逃れるわけにはいかないのです。


もし、アメリカに生を受けて、科学的な知識や論理が際立って優秀だった場合、「マンハッタン計画」に名前が上がっていた場合、これを避けるのはかなり難しかったと思います。科学者の中でも、かなり温度差があるとは言え、ユダヤ人であり、ナチスに対抗するために、積極的に関わったのが、オッペンハイマーです。


そういった人物の伝記映画です。これは世界中の人が観るべき映画だと思います。


役者さんはどなたも素晴らしく(約1名はちょっと、とは思いましたがネタバレありの感想で)、しかも豪華賢覧です。とは言え中でも、キリアン・マーフォー、ロバート・ダウニー・Jr、フローレンス・ピュー、そしてベニー・サフディは別格に良かった。特に、フローレンス・ピューは恐ろしいまでの存在感・・・何なのこの子の出演作全部凄いってドユコト?って思います。凄く監督に愛されてるんだと思う。


そして撮影も恐ろしくクリアで、焦点がいろいろ合い過ぎてて怖いくらいです。


その上を行ったのが音圧と音楽。これは肌感覚で、音に包まれる感覚で、今までの映画体験の中で1番凄かった。


これを観て、何を感じ、何を考えるか?きっと様々で正解は無い。監督には製作の動機、見せたい風景、音、いろいろあるでしょう。聞けば教えてくれる監督もいるとは思いますが、基本映画を観てくれ、としか言いようがないと思います。言いたい事は全部映画の中に込めていると思いますし、それをわざわざ監督に言葉にさせるのは、ちょっと上品とは言えないし、聞けないのが普通の人だし、そう言うモノだと思います。だから自分で感じ取った物が自分の正解だし、他者と話して感想が変わる事、あると思います。それでもいいと思うのです。もちろん映画評論家のような人のインタビューとかは有り難く聞きますし読みますけれど、別にそれが正解じゃないと思います。監督だってその時の気分で答えが変わる事もあると思いますし。


ただ、オッペンハイマー個人の人柄というか性格、ちょっと褒められたものでは無いとも思うし、とは言え、仮に共産主義者だったとしても、国籍を奪えるはずもないとも思います。


時間の経過とともに、常識は変わっていきます。ナチスを相手にしていた時は開発が必要だったのだろうけれど、降伏したら必要が無くなった。しかし、まだ日本が抵抗している(けれど時間の問題でもあった)し、冷戦がはじまる直前ですし、ソビエト連邦をけん制したい。常識は変わるし、未来は見通せない。でも、今、決断しなければならない。その決断に責任を負わなければならない。そういう人の話し。


決断を迫られた事がある人に、今の地球で生きている人にオススメ致します。


今の所の、クリストファー・ノーラン監督の到達点。好みの問題はいろいろありますけれど、1番凄い作品。