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プラダを着た悪魔のしゃにむのレビュー・感想・評価

プラダを着た悪魔(2006年製作の映画)
4.5
「誰もが私の生き方を望んでいる。誰もが憧れているのよ」(ドヤァァァァ)

女性同士の意地とプライドがガチンコでぶつかり合い、激しく、かつ華麗に飛び散る火花。嫌味な上司の生半可じゃないワガママな仕打ちに耐え抜きギャフンと言わせる快感。バトルは闘技場で起こっているんじゃない、職場で起こっているんだ。ムッキムキの精神力で打ち勝つ武闘派ワーキングムービー。前向きかつアグレッシブになれますぞ。

いやはや熱い映画です。しゃれおつな映画ですがセッションを彷彿させるようなスポ根魂を感じました。自分にはミランダがフレッチャー教授に見えましたよ(゜ヮ゜)

アンドレアはジャーナリストを夢見るお洒落に無頓着な女の子。夢へのステップアップの為にファッション雑誌のアシスタントに応募します。これが悲劇の始まりです。

アンドレア「面接に来たんですけど…」

ライバルとメガネ「その服はお婆ちゃんのお下がり?」クスクス

ハゲ「あの子、おかしいね(頭と服が)」

アンドレア「」

初っ端から非難の集中砲火。さすがファッションの最先端を行きファッションを作る編集社です。服装に無頓着なアンドレアにも非はあると思うんですよ。野球部に入ってユニフォームを着ないような愚行だ。落ち込んで帰ろうとしたら、ファッション業界の大物ミランダが直々に面接をしてくれることに。

アンドレア「○○大学卒で学生時代は○○に打ち込んで…」

ミランダ「で?」

アンドレア「はい?」

ミランダ「何しに来たの」

うろ覚えですがこんな感じ。圧迫面接というやつか…いや、ミランダは故意に威圧しているのではなく自然体で人を威圧しているのです。自信満々の自分の基礎になっているのは自分の才能のへの絶対的な信頼。天才は天才であることを疑わえないのです。アンドレアはすっかり怖気づいてしまい、答えに詰まります。もうダメだ、やけくそになって本来言うべきことの間逆のことを言います。

「ファッションには興味ないし私はダサい人間です!だけどジャーナリストになりたいんです!なる自信は誰にも負けません」

普通なら不合格でしょう。だけどアンドレアの正直な言葉は奇跡的にミランダの琴線に触れた、いや、かすったみたいで、アンドレアはミランダの第2秘書として採用されます。

ミランダはかなりワガママです。天才と世間が認める彼女だからこそ呆れてしまうワガママが通ります。何が何でも通します。必ず。

早朝に叩き起こされて熱い「スタバ」の用意に走ります。席に座りっぱなしで電話の対応したりミランダがデスクに放り投げるバッグやコートをシワひとつなく保管。ランチは15分で済ませ、ミランダから来いと言われたらランチ抜きで仕事です。

こんなのまだ優しい方です。

ミランダ「家に帰りたいの。飛行機を捕まえて」

アンドレア「でもハリケーンが来てて飛行機は飛びませんよ!」

ミランダ「私の命令よ」

アンドレア「」

さらなる難題もあります。

ミランダ「ハリーポッターの新刊を娘たちが読みたがってるの」

アンドレア「今すぐ買ってきます!」

ミランダ「何勘違いしてるの。『次の』新刊が私は欲しいの」

アンドレア「」

出版前の原稿を寄越せと…

個人的に一番キレそうになったのはステーキのくだりです。

ミランダ「ステーキ。15分以内に」

アンドレア「はっ、ただいま!」

数分後…

ミランダ「何、これ?」

アンドレア「ご注文のステーキですよ」

ミランダ「会長とランチ」

アンドレア「」


⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーン

⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーン

⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーン

辞表書くお☆


ですが、アンドレアはミランダの無理難題に毎回応えて行きます。あれだけバカにされた私服もすっかり改善され見違える美人に。仕事もミランダの思考パターンを把握してあらかじめ先回り出来るほどに。鐘を鳴らして響くと嬉しい。ミランダはアンドレアを自分の右腕になり得る人材になるようにしごきます。容赦なく徹底的に。嫌がらせやいじめに見えなくもないですが…(゚∀゚)

ただ一方的に厳しい人格破綻者かと思いきや人たらしの技も使えます。

「貴方の立派な演説を聞いた時に『この子は違う』と感じたの」

認められたい欲求に飢えていた人にはたまらない言葉。俄然やる気が溢れる。ミランダは飴と鞭(もっぱら鞭ですが)を使い分けます。

「ランウェイ」に集まる人間はみんな夢に生きています。ファッションに恋した人、ランウェイに憧れる人、ミランダに心酔する人…そんな人々との出会いの中でアンドレアのいい加減な気持ちは本物に変化します。


アンドレアとミランダは分身になりそこねた2人です。

ミランダ「貴方は私に似ている。人が何を求め必要としているかを超え、自分の為だけの判断が下せる」

ミランダは自分の感性だけを頼りに流行を生み出します。

アンドレアは自分の感性を信じてミランダをサポートします。

本質的には瓜二つ。決定的に違うのは仕事に身を捧げらるか否か。

ミランダは捧げられます。生活廃人と呼べます。夫には捨てられ、子供たちには失望されて、煌びやかに見える家庭の内実は崩壊寸前。

アンドレアは捧げらません。途中まで仕事の鬼になるほどモーレツに働きますが、気づきました。自分は仕事の悪魔にはなれない。プラダを着た悪魔にはなれないんだと。

限りなく似ていて究極的に違う2人は引き合い拒絶します。

面白いのは悪魔に成らずに悪魔を制してしまうこと。

最期の邂逅のシーン。ミランダが見せた最初で最後の微笑はアンドレアの最高の報酬だと思います。偉大なる勝利でした。

マイ・インターンではキラキラバリバリのキャリアウーマンを演じたアン・ハサウェイが社会人成り立てのひよっ子を演じます。あちらを観てこちらを観るとギャップがあって面白いですね((*´∀`*))
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