雨虎

プラダを着た悪魔の雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

プラダを着た悪魔(2006年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

アンドレアはファッションに興味がないことから、2つのベルトは同じに見えると言った場面でミランダは皮肉で返すわけだが、真実であるが故にアンドレアには深く刺さり、激しく怒るという流れが印象的だった。こんなものと思った物は全て誰かが作り選んだもので、そこに「こんなもの」と呼ばれる物はないという言葉にすれば当たり前ではある。しかし、生きている中で無関心な物に対しては暗にそう思っている部分が全くない人は少ないのではないか。貴賤はないことをもっと理解していく必要がある。
アンドレアが仕事をこなせるようになってから、友人たちにブランド物を渡した後に、ミランダから電話がかかってきたシーンでは、友人たちがふざけて携帯を奪い、電話を取らせないようにしたが、さっきまで何万円もする物をもらっておきながら人の夢の邪魔をするのは神経を疑った。
アンドレアの彼氏のネイトにはいらだちを覚えた。彼女が夢のために嫌でも1年だけ頑張って仕事をしている状況で、仕事の電話がかかってくれば「洗脳された」、ファッションの勉強をしてきれいになった彼女に「前の方がよかった」、急な仕事で誕生日を祝えなかった彼女に拗ねて部屋にこもる。彼氏より仕事優先が何年も続いていたり、1年1年が重要な学生時代なら理解もできるが、ネイトも20代で若いとはいえ、彼女の夢と自分を天秤にかけて彼女の夢を応援してあげないのはどうしてなんだと思った。
もちろん、彼自身も仕事しながら彼女にご飯を作ってあげたり、買い物したり、愚痴に嫌な顔せず聞いてくれているなど、良いところも多いし、アンドレア自身が話し合い自体をあまりしてこなかったというのもあるため、巷ではミランダではなく、ネイトが真の悪役と言われたりもしているようだが、個人的にはそうではないし、ネイトが全て悪いとは思わない。ただ、どうも足を引っ張っているように見えてしまうことには同意見ではある。
自分自身で選択していくという大切さをアンドレアが学び、最後は仕事をうまくできているのに、1年立たずにミランダの元を去るという選択をするという決断はなかなかできることではない。それまでの努力を全てふいにする可能性すらあった。それでも人情を大切にしたいという自分の気持ちに従って行動を起こした。ミランダは直前に車の中で仕方がなかったというアンドレアに全て自分が選んだ結果だと言ったため、ある意味で背中を押したような感じになったが、もしかしたら本当に背中を押していたのかもしれない。だからこそ、1年経たずに辞めたという経歴が不利にならないようにしたのも素直ではない彼女らしいとも思った。
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