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毒薬と老嬢のSPNminacoのレビュー・感想・評価

毒薬と老嬢(1944年製作の映画)
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ブルックリンに、それはそれは善良で心優しきブルールター姉妹がおりました。ところが、誰も姉妹の秘密を知らなかったのです…甥のモーティマーが窓際のベンチに死体を見つけるまでは。
自分を大統領と思い込むテディを哀れんでみせて、その実もっと狂っていたのはにこやかにほのぼのと殺しまくる仲良し老姉妹。更にはボリス・カーロフ似の兄貴&フランケンシュタイン風博士、芝居狂の警官、結婚行進曲の口笛で呼ぶ新妻…独身主義だったのに勢いで結婚したモーティマーもまた恋に狂わされた男である。結局、正気と狂気は紙一重。でも幸せならいいじゃないの、ってフランク・キャプラもどうかしてる。上には上をいく異常事態を畳み掛けるスクリューボール・コメディは、ハロウィンならではの陽気な賑やかさだ。
しかしこんなにナンセンスでカオスな展開なのに、無理なくぴたりとピースをはめ込んで納得させる脚本がお見事。冒頭で結婚を知られたくないと必死だったモーティマーは、その後身内の殺人を知られまいとして必死で奔走する。乱闘する野球選手と取っ組み合いする警官たち、隠した死体、突撃ラッパ、毒入りワインといった同じネタを入れ替えて変奏する面白さ。ずっと漫画みたいなリアクション芸で狂言回しを務めるケイリー・グラントが、ドタバタと大いに笑わせる。
主に老姉妹の邸宅を人が出入りして繰り広げる騒動はそのまま舞台劇風で、二階から地下室まで上へ下へのてんやわんやがダイナミックなアクションを演出。死体や殺人を見せず、一番の拷問はつまらない芝居の筋を聞かされること!この映画にあるネタは後の色んな脚本に使われてる古典だなあ。いつまでも待たさせるタクシー運転手は『ダイ・ハード』だし。
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