diesixx

未知への飛行のdiesixxのレビュー・感想・評価

未知への飛行(1964年製作の映画)
-
シドニー・ルメット一級の超ハードコアな反核会議映画。システム誤作動で水爆搭載の爆撃機がモスクワへ。通信で呼び戻そうとしたり、戦闘機で撃墜しようとしたり、後半はソ連司令部とも連携し、止めようともするが、高度化された指示系統と相互不信が足を引っ張り、どうしても止めることができない。後半に爆撃機パイロットの夫人が出てきて、「ここで止まるのかな」と安心して見ていたら、まさかの展開に絶句。これもまた冷戦下のリアルということか。同年公開の『博士の異常な愛情』と比較されることも多いが、新冷戦時代に突入し、いま持って戦火の絶えない現代に見返すと、切実に迫ってくるのはやはり本作の方だろう。
空中戦はレーダーの画面のみで表現。ソ連司令部の様子も一切映さず、軍司令部と大統領執務室、爆撃機内の映像の切り返しのみで緊迫感と閉塞感を盛り上げていく。高血圧なクローズアップと編集、音響設計、いずれもルメットの才気がほとばしっている。感傷を拒否するかのような鋭いホワイトアウトが、今も世界へのアフォリズムを突きつける傑作。
diesixx

diesixx