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ピアノ・レッスンのdiesixxのレビュー・感想・評価

ピアノ・レッスン(1993年製作の映画)
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ジェーン・カンピオンの代表作。最近4K修復版が公開されているようだ。
サム・ニールは、『ジュラシック・パーク』と同じ年に、ハーヴェイ・カイテルは『パルプ・フィクション』や『バッドルーテナント』の翌年に本作に出ていて、2人とも役者として脂が乗り切っていたことがうかがえる。
ピアノを通じてしか感情を表現できない唖者の女性エイダの静かな情熱と欲望が、物語の推進力。ホリー・ハンターには文字通り一世一代の役となった。
カンピオン脚本は、ひとつのキャラクターに肩入れしないというか、ひいきしないというか…それぞれのキャラクターの弱さや醜さを描くのがうまい。エイダにもベインズにもスチュワートにもそれぞれが間違う。娘のフローラでさえ、のちに取り返しのつかない悲劇を招く間違いを犯す。でもそこにこそカンピオンの人間への深い洞察と信頼があるようにも思う。
エイダがピアノと共に海底に沈むのと、靴を脱ぎ捨て生還するのと、どちらの結末でもそれぞれに美しさがあるように思う。そういった物語と人間の割きれなさに、ひかれる。
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