blacknessfall

恐怖の足跡のblacknessfallのレビュー・感想・評価

恐怖の足跡(1962年製作の映画)
3.5
ある層にとってはとても有名なカルト映画。
ロメロがこの映画にインスピレーションを受けて「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」を撮ったことから、そっち方面の人達から崇拝されてるんだよね。

友達の運転する車に同乗し交通事故に遭ったメアリー、友達の死にショックを受け事故現場から離れた寂れた町で暮らし始める。
町で暮らしてから彼女は湖にある遊園地の廃墟に惹き付けられるようになる。同時に不気味な男が彼女に付きまとい始める。その男は周りの人には見えない。幻覚なのか?
幻覚?と遊園地の廃墟への妄執、メアリーに何が起こったのか?


【以下ネタバレあり】








オチを言ってしまうと、 彼女は実は事故で死んでおりそれを自覚できない彼女の魂を死者達が迎えにきてましたって話。
実は死んでました系のミステリーホラー。

ロメロが影響受けたのはこのありがちなストーリーではなく死者達の造形、白塗りで虚ろに眼を見開き不穏な動きでメアリーに迫る死者達。それはまさに「ナイト・オブ・リビングデッド」のヤツラそのもの笑
他にも白昼夢のような幻想的で異様なムードや不自然な会話や生気のない演技、悪夢的でシュールな演出。
深い意味があるのか単にイメージのつなぎ合わせなのか分からないグルーヴはデビッド・リンチ監督の映画、特にイレイザーヘッドとロストハイウェイに近く感じた。
カルトになる映画らしく後の名作の類似を感じるシーンが多い。
あ、これはあれみたいな演出だ!と気づき、この時代にそれを先取りしてるセンスに驚嘆できるのは、無駄に色々映画観てきた人だけが味わえる特権だよね笑

監督はメアリー通じて自分の人生をしっかり楽しむことの大切さを訴えたかったらしい。
確かにメアリーは周りの人にまったく心を許すことなく頑なに自分の殻に閉じ籠った生活をしている。
教会のオルガン弾きの仕事にそぐわないからと酒もダンスも楽しまない。
彼女を気にかけ親切にしてくれる男性もいるが決して心を開くことはない。
そして人生を謳歌することなく事故で死んでしまう。
確かにいつ死ぬか分からないから人生を謳歌しなさい、メアリーみたいにならないように、てメッセージは分かるんだけど、これはあまりに男目線の間違った教訓に感じた。

まず、気にかけ親切にしてくれる隣人、まあ、確かにそうなんだけど演出のせいかあからさまに体目当ての男にしか見えないんだよ。彼女がバスローブ姿なのに強引に部屋に入り込みドアのすき間から着替えを覗こうとしたり、、こんなのに心開けと言われても困るよね笑 他に出てくる男も何かみんなエロオヤジみたいなやつばかりなんだよね。
今の視線で見るとメアリーが悪いんじゃなくて自分の願望を思いやりにすり替えてる男の方が悪く見えるんだよ。
最近、よく取り上げられるミソジニーにスポイルされる女性の生きづらさをテーマにした映画としても観れる側面もあると思った。
blacknessfall

blacknessfall