それが人生だと、愛だと信じて、ひたすら耐えて守ってきたのに。
心のどこかで違うような気はしていた。もう耐えるのが辛くて、違うような気がする心が膨らんできていた。膨らむ不安を見て見ぬふりができなくなる瞬間が立て続けに訪れた時、陥落してしまった。
陥落したのは誘惑ゆえではない。新たな愛への気づきゆえ。疲労ゆえ。古い愛が役割を終えたがゆえ。
大風が吹くと決断や転機が訪れるように、カカオはほんの少し、血潮に勢いを与えただけ。
しかし陥落する瞬間の、滑稽なまでの罪深さの、なんと痛快なことか。ついつい高笑いが止まらない。疲れるほどキンキンとした声で笑う自分に驚く。
僕が働く組織の空気もこうはいかないものか。組織の空気や空気を形作る権化のような存在を陥落させるカカオのようなものは何か。ちょっと真面目に考えてしまう。メキシコに行けば見つかるだろうか。