橘宏樹

海がきこえるの橘宏樹のレビュー・感想・評価

海がきこえる(1993年製作の映画)
4.7
なんてことない、優しい高校生男子がふたり。
彼らの片方に、最初からあまえ切った転校生女子。

女の子が男の子にあまえている、あまえられるということは、当然それは、既に好きだからなのだってことを、思春期の当事者が自覚するのはあまりにも困難。別にそれでいいじゃないの。好き以上でも好き以下でも、なんでもなくても、別にいいじゃないの。

ライトアップした高知城を見上げて無言でいれば、いいじゃないの。

実は直前に、新海誠「言の葉の庭」を見たが、美麗な映像を台無しにしかかるばかりの野暮過ぎるセリフ回しに激怒して涙が出そうだったが、リカコとタクのどうでもいい鞘当てのなかに、真情を滲ませては、すっと引く、高等な余韻と余白に、慰められた。色々と鮮やかに対比できる両作品。

そして、タクの声優は飛田展男ですよ。どこかで聞いたよこの、線細い優柔不断と思わせといてからの、もともと持っている、轟轟たる、決然たる男らしさをチラつかせるあたり。カミーユですよ。さすがです。さすがすぎます。
橘宏樹

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