予想以上に『レベッカ』の影響を強く感じたが、それでも心のいやな部分を突かれる心理的ホラーとしても陰影の効いたゴシック・ノワールとしても適度な格調もあって良く出来ていたし、何より夫に翻弄され精神を追い詰められていくイングリッド・バーグマン迫真の演技に圧倒され結構楽しめた。
でも人物の描写の浅さやミステリー部分の弱さ、オチが予想通りのところに着地するところなど細部の穴が気になって私としては面白い以上に心を打つ作品には至らなかった印象に。あと梅宮辰夫ばりのジゴロであるシャルル・ボワイエがバーグマンをいたぶり転がす描写がひたすら長くてしんどかったところも個人的にはいただけなかった。
ただ肝心のバーグマンは綺麗に撮れていたのは女性映画の名手ジョージ・キューカー監督の面目躍如と言ったところか。あと屋敷の構造を生かしたカメラワークも結構工夫されていたのも◎。
公害で発生した霧に囲まれたロンドンの風景も印象に残る。