こたつむり

ベルヴィル・ランデブーのこたつむりのレビュー・感想・評価

ベルヴィル・ランデブー(2002年製作の映画)
3.6
♪ Now let me tell you one thing
  We are all right here for you and only you
  We will always sing for you
  So why not sing along with us

奇怪で奇抜で奇天烈なアニメでした。
主人公は老婆。手助けてくれるのも老婆。あと、犬もいますが、シャープでもファニーでもなく、ひたすらにスロウ。この人物設定からして独特です。

また、視点はシュールでファニーでブラック。
アメリカ人は只管に太っていて、フランス人の血はワインで、鍛えた筋肉はモンスターで、お金をかけずに食べられるのはカエル。うーん。独特どころか突き抜けていますね。

ただ、ねえ。
ぶっちゃけ、ねえ。
正直なところ、既視感を抱いたのも事実。

そう。あの“ゲーム”に似ているんです。
それは任天堂の牙城が崩れ、ゲームの世界にアーティスティックな血が流れ込み、奇々怪々な作品が作り出された時代…プレイステーション初期(と言っても1997年)に発売されたゲーム『moon』。

確かにあのゲームも根底は“アンチ”な精神。
それは本作も同じでした。

『moon』はRPGにラヴをこめて揶揄していましたが、本作はカラフルでポップな文化に全力で中指を立てているんです。そして、そんなフランスらしいシニカルでウィットなエスプリで構成されているところに“懐かしさ”を感じたのだと思います。

その世界観は、まるでムーンライト。
ピアノとノイズとリコーダーとアコースティックギターが奏でるセレナーデはキャッチーのようでいてビビッドなポエム。アンバランスのように見えるビジュアルは計算されたアート。

まあ、そんなわけで。
哲学のような雰囲気を醸し出した一風変わった作品。実写と違ってアニメは直接的に想像力が具現化されますからね。“好奇心”を満たすには最適な物語だと思います。

…が。
悪夢を見る可能性もありますので。
カエルが好きな人、アメリカンドリームを追っている人、ブラックジョークが苦手な人は服用しないでください。また、服用後、乗物または機械類の運転操作は避けてください。
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