ベイビー

ベルヴィル・ランデブーのベイビーのレビュー・感想・評価

ベルヴィル・ランデブー(2002年製作の映画)
4.2
僕がシルヴァン・ショメ監督を知ったのは「イリュージョニスト」という作品を観てから。その作品の作画がとても美しく、まるで動く絵本を観ているようでした。

僕の知り合いに絵本作家の女性がいたので、その作品のことを教えたら、彼女はその作品のことを知っていて、ショメ監督のファンとも言っていました。

彼女はショメ監督の作品の中で、今作の「ベルヴィル・ランデブー」が一番好きとも教えくれました。

そんな会話ももう一年前。正直その会話のことは忘れていたのですが、久しぶりにTSUTAYAに行った際に偶然作品を見つけたので、この機会にレンタルしてきました…

何これ、めちゃくちゃ面白いやないかーーい🥂

作画が確かなのは言うまでもありませんが、何このセンスの良さ⁈ ストーリーが不思議。小ネタも面白い。脈絡のない物語のようで、伏線回収がしっかりしている。

終始つきまとうのは、ウェス監督みたいな"何これ?"感。

だって、おばあちゃんがガタガタになった自転車のスポークの歪みを直すのに、音叉を使って耳で直そうとするんですよ。音叉を鳴らして、スポークを曲げて、その音程をチューニングするようにスポークの歪みを直そうとするんですよ。それで意味もなく音階作って、やがてリズムができて、それを聞き付けた三つ子の婆さんたちが、リズムに乗って踊りだすんですよ。なんじゃそれ! ってなりません?

何、そのくだり! 何これ? 何やってんの⁈ と、ツッコミたくなる場面が山ほど。カエルをチュパチュパするな! って誰もが言いたくなりますよ。

全編ほとんどセリフがないにもかかわらず、クスクス笑わせたり、ホロリとさせたり、作画と音楽でだけで、これだけ豊かな表現ができるなんて、センス無くして出来ませんよ。

DVDの特典映像で、高畑勲さんもおっしゃってましたが、ショメ監督は宮崎駿監督に似ていて、全てに貫徹しているから、ここまでの作品ができたのだと思います。とことんこの作品を面白くしようという想いが、終始ブレない作風となって、観る者を魅了しているのだと思います。

これぞまさに職人技。自分の中のイマジネーションを徹底的に具現化させる。これがプロの仕事ってやつなんですね…

って、この作品を教えてくれた絵本作家の彼女と、この作品の素晴らしさを共有したかったのですが、彼女はすでに会社を退職したため、それは叶いません。とても残念…

この作品を教えくれてありがとう。

そう心からお礼を言いたくなる、とても素敵な作品でした。
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