ベイビー

フォロウィング 25周年/HDレストア版のベイビーのレビュー・感想・評価

4.3
冒頭から何となく安部公房作品っぽさを感じてしまいました。いわゆる不条理もの。主人公がひょんなことから厄介ごとに巻き込まれてしまうお話。とても僕好みの作品でした。

この長編デビュー作から既にお得意の時系列いじくり演出が炸裂。ある意味ブレてないというか、もうこの時点でノーラン監督っぽさが確立されていましたね。

「オッペンハイマー」も時系列がぐちゃぐちゃだったにもかかわらず、全然頭の中で順序よく物語を追って行けたことに、“本当スゲーなあ”と感嘆して作品を観てたのですが、本作も浦沢直樹先生の漫画みたいに、物語が進むにつれ時系列のパズルがちゃんと完成されて行くんですよね。それが観ていて気持ちいいんです。

あと音楽も良かったです。本作の音楽は初期のノーラン監督作品で数多く音楽を担当されたデヴィッド・ジュリアン氏。ノーラン監督作品といえばハンス・ジマー氏や、最近ではルドウィッグ・ゴランソン氏の印象が強いのですが、こうして改めて初期の音楽を聴いてみると、もうこの頃から既にノーラン監督らしい音楽が確立されていたのだと気づかされました。

あの冒頭から聴こえた“ドドドドドドドドドド”という圧迫感のある音。それだけで緊張感に煽られ、これから何が起こるのだろうという期待がどんどん膨らんで行きました。

とにかく脚本が素晴らしい。もちろん時系列を崩した演出も見応えありました。クリストファー・ノーラン監督のファンなら是非押さえておくべき作品だと思います。

あとビル(The Young Man)の部屋のドアに貼られたステッカーも必見ですね。あれはノーラン監督ファンのみならず、彼の作品を知る人なら誰もがニンマリするのではないでしょうか。
ベイビー

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