レオピン

ディナーラッシュのレオピンのレビュー・感想・評価

ディナーラッシュ(2000年製作の映画)
3.7
いつから外食が演劇になったんだ?

2002年9月公開。まだビデオ屋の棚はVHSと両方並んでたような頃でけっこうプッシュしてた記憶。

インディー映画の佳作。あんなノワール味で挟んでたなんて。厨房の慌ただしさ以外すっかり忘れてた。今でこそ料理人やレストランキッチンを描いた作品は数多くあるが案外これが嚆矢でないか。これを見て飲食業界へ行った人も多いのでは。

料理そのものよりも、キャラクターが重視されていて各々で短編小説が書けるくらい。小気味いいスピーディな会話でつないでいく。役者にとっては演りがいのあるタイプの作品だろう。

地下の厨房はオーナーの息子ウードと副シェフのダンカンが取り仕切っている。シェフ以外は命令に絶対服従の超体育会系スパルタ空間。彼らのいがみあいにニコーレとの三角関係もあったりして。二人の協力によってヤマ場を乗り越えていくマンガっぽい展開もあり。。

ダンカンはひどいギャンブル依存症。脳科学によるとギャンブル依存というのは脳の報酬に対する感度が過敏なことが原因だ。刺激に対してブレーキが効きにくく、ドーパミンの活性が強い外向的性格によく見られる。既に彼の五感は鈍い状態だということがいえる。だとすると彼の舌は信用できないのでは。多分長年の勘だけで調理しているのだろう。だから彼は古いスタイル。ルイスの好みの味だけはしっかり覚えているのだな。
厨房に着くや禁止されているソーセージを勝手にちょちょいと調理してルイスに届ける。賭けバスケを受けてくれるようお願いするために。だがルイスは彼のことを思って引き受けない。

ウードにエドアルド・バレリーニ 目がはれぼったい
ダンカンにカーク・アセヴェド 帽子がかわいい
ニコーレにビビアン・ウー

画家の卵マルティにサマー・フェニックス リバフェニ妹
雑学バーテンのショーンにジェイミー・ハリス リチャード・ハリス息子

画廊経営者フィッツジェラルドにマーク・マーゴリス 名刺置いていってもいいんだが
料理評論家ジェニファーにサンドラ・バーンハード パスタで遊んで(イラっ)

この独立系映画の成功はなんといってもアイエロのキャスティングだ。これまでのほとんどの作品で演じたようにいつもの指定席に座りメラメラ燃え盛る炎を抑えながらも、今日の客入り、店の将来、厨房を任せている男の心理状態にまでじっくり気を配っている。あの気の消し方は武道の達人クラス。

彼の横に座っていた経理だか法務のおっさんも、きっと長年の右腕なんだろう。彼にも凄みを感じた。ふと商売やってた自分の父親の周辺にいた人たちを思い出した。今思えば結構悪そうなオヤジがいっぱいいたなぁ。おやじのツレってのは二代目が赤ん坊の頃から見ているわけで、ある意味一番頼れる存在なんだな。

でもあそこで刑事の奥さんと鉢合わせしたのはマズかったんでは。どうやって警察の捜査から逃げ切るんだろうとか、ヤルなら停電の間にやっとけばよかったのにとか。ま 余計な野暮は言うまい。最低の客にも最高の料理でもてなす。デザートまでついて🚔90分というちょうどよいフルコースが味わえました。
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