チョマサ

ハリーとトントのチョマサのネタバレレビュー・内容・結末

ハリーとトント(1974年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

この映画は人気がある作品なんだろうなとは思ってた。ブルーレイも出てるしニューシネマのおすすめでよく挙がる。ジャケットだけを見ると猫と旅する、のほほんとしたロードムービーなんだろうなと想像してたが、どっこい違った映画だった。

駐車場にすっからってことでアパートを追い出されたハリークーンズと飼い猫のトント。このジジイが頑固で期限を過ぎても立ち退かない。ニューヨーク市警がやってきて説得に来るし、最後はソファーに座ったまま警官に運ばれる。あげくは息子がやってきてハリーを説得する。それで息子の家庭にお邪魔することになる。

ハリーは郷に入らずば郷に従えってことができないタチで、飛行機に乗るときにペットを乗せられないっていうとごねるし、バスに乗ったらトントに小便させたいとバスを無理やり停めさせる。ラスベガスで立ちションして拘置所に入る。「ニューヨークはわしの街じゃなくなった」って話すけど、町は自分の物って意識があるのが面白かった。仕事でこういう客と会ったら、こいつ死なねーかなとムカつくくらい分からず屋な一面がある。
そう思ったらバートの奥さんエレインと口論になったときの理解ある態度やノーマンへの理解、次男のエディを慰めるときの「互いに甘えてはいけない。自分で立ち直らないといけないよ」って父親らしさがのぞいたり、誰彼とも話せるユーモアなど、魅力的な爺さんだから憎めない。じっさいできる人間でラストは高校で働くくらいだから行動力のある立派な人間だ。子供たちの家にいたがらないのも、甘えたくないのもあるだろうけど、自分の場所じゃないからってのが大きいんだろう。

ロードムービーと思ってたんだけどそうじゃなかったというのは、これは家族映画なんだなと思ったから。エディ、セリア、バートとそれぞれの理由でハリーは子どもたちの家から出ていくけど、なんだかんだでアメリカを横断しながら家族と再会して様子をみることになっている。喋らないノーマンやブームに被れる息子たちと喧嘩しながら暮らしてたり、男と別れてたり、仕事に自信を無くしてたりする。ラストも猫と女の子と出てきて子どもたちと猫を一緒の物みたいに考えてんのかな。

当時の様子がわかるのもよかった。冒頭の街に住んでる婆さん爺さんたちや、友だちのファシスト嫌いで経営者嫌いのユダヤ人リロイとの会話はおもしろい。『アイアンサイド』や『ローンレンヤー』自分の仕事や過去について話す。シカゴやラスベガス、ロスアンゼルス、ハリウッドとかの様子もおもしろい。ラスベガスのカジノでねーちゃんたちの楽団が『ロングトレイン・ランニング』を演奏してて、アーこの時代なのかと感慨深かった。
カジノでは隣の男が、ハリーが5ドルかけたせいで儲けが不意になった、ツキが無くなったのはテメーのせいだとキレられたり、ヒッチハイクしたらコールガールがヤラセテくれたり、道中のエピソードもおもしろかった。

音楽とか話のノリは緩いから(70年代や80年代の日本映画にこういう音楽の軽い使い方してる映画があった気がする。ビル・コンティってロッキーの音楽をやってた人らしい)、欠伸も出たんだけど、これはこれでユーモアや家族や友情を描いててキャラも魅力的、おもしろい映画だったな。
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